作文募集スレ




[0] 作文募集スレ

投稿者: 管理人 投稿日:2015年11月11日(水)01時41分6秒 42-148-143-63.rev.home.ne.jp

メルマガ「文芸ヌー」に掲載する作文を募集しています。

テーマは自由。1000字程度のエッセイ、ショートショートなどをお寄せ下さい。
これは!という作品はヌーの方に転載させていただきます。
お名前、メールアドレス入力お願いします。

とはいっても気軽に、文章の練習、実験につかってください。
またここに執筆してくれたひとには個別で原稿を依頼する場合もあります。
よろしくお願いします。

天久聖一





[72] 火星旅行

投稿者: ボーフラ 投稿日:2017年 2月21日(火)15時13分19秒 p156.net059084002.tnc.ne.jp  返信

銀河鉄道を降り、火星のプラットフォームに立つ。遠くのスフィンクスとピラミッドに靄がかかっている。俺は風呂敷包みを背負って、日賃宿を探す。最近ではアンドロメダ星雲への旅行が流行っていて、ビジネスの中心地は太陽系の外である。今時、火星にスフィンクスとピラミッドを見に来る連中など、俺ぐらいだろう。

シャッター通りを通り抜け、細々とやっているコンビニで弁当を買い、垢抜けた広場でそれを喰う。俳句の同人誌に宇宙旅行の俳句を提出しなくてはいけない。詠みどころと言えば、何だろうか。

空を見る。太陽が煌々と輝いている。展望台に行ってみよう。

展望台までの坂道を上がっていくと、もし、と声をかけられる。貴方は、あの力田石次先生ではないですか、と老婆。俺がそうだ、と応えると、老婆は、自分も俳句を詠む、お爺さんが墓の中で待っている、火星には最近若い人が居なくて寂しい、良かったら、うちは民宿をやっているのだが、泊まってくれないか、と懇願してくる。

俺は二も三もなく、老婆の民宿に泊まる事にした。川べりにある民宿は、川で取れた魚料理が名物で、最近では地球の魚よりも美味しくて、脂が乗っているのだと言う。俺は、部屋の窓から、流れる川を見、そして太陽を見た。

センチメンタル火星の宿の老婆は白髪染め
火星の旅館畳でごろり
時計の針が止まっている部屋である

俺は自由律俳句をやっている。二、三句、詠んだが、どうも気に入らない、テレビを点けると、アンドロメダ星雲の競馬がやっている。今日はナポレオン賞だ。どうも痒くなってきた。畳に何か居るようだ。人類の文明は、蚤、しらみの類を絶滅させなかった。

面倒になり、夕食まで昼寝しようと思い、ウオッカを呷って眠りについた。




[71] パパの遺言テープ

投稿者: ボーフラ 投稿日:2017年 2月 3日(金)18時57分54秒 p156.net059084002.tnc.ne.jp  返信

パパが亡くなってから三年、書斎を片付けていたら、カセットテープがひとつだけ引き出しの奥にあった。ママが留守の間にそのテープを聴いてみようと思ったあたしは、ラジカセにカセットテープを入れ、再生ボタンを押した。

『良子、すみれ、このテープを聴いている時、パパはもうこの世に居ない。良子、ずっとずっと有難う。すみれ、大丈夫か、変な男に捕まっていないか。もう遺産分割は終わっているか?終わっていないなら、このテープをこれ以上先、聴くのはよしなさい。もし終わっていたなら、この先を聴いて欲しい』

相続は、パパが亡くなった翌年の二月に終わっている。あたしは続きを聴く事にした。猫のミーちゃんが、あたしの膝に乗った。

『驚かないで、聞いて欲しい。パパは、死んじゃあ、いないんだ。黄泉の国から、たくさんの、宝物を持って帰る為に、死んだのさ。パパのお墓の前で、"曼珠沙華は充分だ"とお唱え。そうすれば、パパは』

ここでテープが終わっている。ママが買い物から帰ってきた。あたしが内容を説明すると、ママは、

「そうねえ。パパは、妄想癖があったから、そんなの絶対嘘よ」
「でもトライしてみる価値はあるんじゃない?」

パパの墓は、家のお庭にある。松の木の下だ。あたしとママは、サンダルを履いて庭に出て、墓石の前に立った。ママが言うか、あたしが言うか、決めかねていると、猫のミーちゃんも墓石の前に来て、にゃんにゃんと笑った。

あたしが言うわ。

「曼珠沙華は充分だ」

その夜、あたしとママは、湯豆腐を食べた。パパの好きだった湯豆腐だ。何も起こらなくてほっとしたけれども、ひどく疲れた。あたしは泥のように眠り、朝、目覚めた。やっぱり何も変わっていなかった。

変わっているのは、パパの方だった。



[70] 終末のガイドブック

投稿者: ボーフラ 投稿日:2017年 1月24日(火)19時02分49秒 p156.net059084002.tnc.ne.jp  返信

名前も知らない男が、俺のベッドで眠っている。昨夜路上で拾ってきた奴なのだが、泊まるところがないという。俺はソファーベッドで眠り、今、牛乳を沸かしている。

テレビでは、朝から相撲中継。初の日本人横綱が宇宙人だったので、千秋楽を朝から取り直している。男が起きてきた。無言である。自分は牛乳をカップに入れてやり、食卓に座る。男も座る。

奴は牛乳をゆっくりと飲んで、何か言おうとしている。俺は黙っていたし、俺の携帯電話が鳴り始めた。友達からの電話であるが俺はそれを無視した。

こいつは何者なのだろうか。風体は冴えない眼鏡のオタク、着ているものは薄汚れたジャンパー。俺は何もかも嫌になったので、核ミサイルのボタンを押した。世界は48秒後に滅亡するだろう。そう思うと、笑いがこみ上げてきて、核の炎で全員死ぬ寸前まで、呵々大笑、呵々大笑である、49秒目の事は記憶にない。

牛乳のカップから湯気が出ている、奴は、ずっと無表情のままだった。



[69] 遠ざかる

投稿者: ボーフラ 投稿日:2016年11月29日(火)05時36分35秒 p156.net059084002.tnc.ne.jp  返信

賭け麻雀で停学になった先輩が、屋上でトランペットを吹いている。僕らは落ちこぼれグループであり、先輩はスクールカーストの上位に属する不良だ。僕らはこの先輩に忍従を強いられており、その音は僕らの顔の陰影に苦悩を落とした。

やっとトランペットの音がやんだ。僕らは先輩に鉢合わせしないように家庭科室に入ってやり過ごし、そのまま下駄箱の方へ向かった。そこには女の子が沢山おり、何かを取り囲んで騒いでいる。

「東(トン)が落ちてる」
「東が落ちてるのよ」

麻雀牌があるようだ。僕らは、埃にまみれた学生服のまま、お下がりの自転車を漕いで坂道を下っていくのであった。



[68] 固体の部屋

投稿者: いなずま 投稿日:2016年11月19日(土)11時12分4秒 KD106161123127.au-net.ne.jp  返信

少年は親友のタダシをリキッドルームに招いた。
日頃から、眠たい、しんどい、暑い、寒いと同じぐらいの生理レベルに「リキッドルームってなんだ?」という疑問を心情に並置させていた少年にとって、リキッドルームを作るのは命題にも似たことだった。

テレビ、パソコン、雑誌などからTOKYOの情報として耳馴染みのあった「リキッドルーム」というなぜか気になる言葉のその語感から、少年は自分なりのリキッドルームを作った。

リキッドルームを作るにあたり、少年は参考としてリキッドの意味だけを調べた。液体という意味をそこで初めて知った。ルームが部屋というのは知っていた。
「リキッドルーム」と検索窓に全文を打ち込むことはしなかった。答え合わせをするのは、少年にとって、自分の思い描く「リキッドルーム」を瓦解させるひどく無粋な行為だとわかっていたからだ。

かつて、少年は「藤原ヒロシってなんだ?」という疑問も持っていた。リキッドルーム同様にTOKYOの情報としてなぜか見覚えのあった漢字とカタカナの組み合わせ「藤原ヒロシ」を、たびたび気にかけてしまう頃があった。
だからといって、性急に調べるほどのことではない、といったなぜか確信に近い思いがあり、その時がくれば知ることになるだろうぐらいの心持ちで「藤原ヒロシ」が開示される日を、なんとなく待ちながら差し当たりの日々を過ごしていた。いつでも調べれるという余裕が、いつまでたっても調べない結果を作っていただけに過ぎないが。
ほどなくして、3日ほど立て続けにコンビニの雑誌棚やPC画面から「藤原ヒロシ」の文字列が目に飛び込んでくることがあり、それを天か某かの思し召しと受け取った少年は「やっとその時が来たか、意外と早かったな」と感慨少なめに、検索窓に「藤原ヒロシ」と打ち込み画像検索をしていた。少年は愕然とした。

PC画面にタイル状で行儀よく並ぶ長髪のおじさんは藤原ヒロシその人だったが、少年が待望するところの藤原ヒロシではなかった。
しかし、こんなに長髪が似合わない人間がいるのかというショックが少年に襲いかかった。
藤原ヒロシの住む界隈を取り仕切る傲慢な権力者かに「頭髪を伸ばしなさい。そりゃ肩まででしょ」と頓痴気な命令を受けたとしか思えないほどのそぐわなさを感じ、顔つきもどこか、その理不尽な長髪命令に異を唱えているような不平を浮かべたものに見えた。

少年は学んだ。現実が粗忽なほど無遠慮に提示する「正しさ」ってのは、人を挫かせるには充分すぎるということを。
誰かが何処かで言ってた気がする。多分テレビだった「切手のダビデ像のほうが美しかった」と。
少年は藤原ヒロシが並ぶPC画面を眺めながらその誰かの言葉を反芻していた。所詮現実は、人ひとりの中で醸造させていた思惑、想像を超えることが出来ない。頭の中のほうが美しいのだ。それと、過度な期待はしておくものではない。その夜少年は、母の自転車を使って隣の市にある海浜公園へ行き、海を見た。朝焼けが顕になる前に家に帰った。

藤原ヒロシの件から得た教訓を踏まえて出来上がったのが「リキッドルーム」だった。
現実に存在するTOKYOのリキッドルームは知らないが、少年は自分の作ったリキッドルームが一番美しいと信じていた。頭の中からこの現実に表沙汰にした事による凝固を、まぬがれるなんてできないが、ほぼ頭の中で描いていた通りの、摩耗を極限にまで抑えたリキッドルームが現前した。奇跡だった。

少年は完成したその日に親友のタダシを呼んだ。
翌々日の夕方のニュースに、社長が逮捕されてから荒んでいた解体屋の、その敷地内にあったプレハブ小屋から、二人の溺死した少年の遺体が見つかった。二人の肺から海水が検出された。

https://www.youtube.com/watch?v=5ePmwj9bj_E



[67] ひかり

投稿者: いなずま 投稿日:2016年11月11日(金)04時43分31秒 KD106161117122.au-net.ne.jp  返信

玄関の戸を締めてすぐ、ひらってきたライターの火を見た。
靴を脱いだのはそれからで、戸に背をあずけたままチャイルドロックで重いボタンを8回引いて、そのうち最初の3回だけ丸く小さな火が立った。それっきり火は立たなくなった。
靴を脱いで、流し台のはじにライターを置いた。
冬の鍵で冷えた手をかざしたかったわけではない。ただ点灯を確かめるために見た。

疲れていても眠れないとき、YouTubeでドラレコに残っていた事故映像や、パルクールの失敗動画を検索し、それを虚心に眺めながら睫毛をすべて抜いてる癖がある。
その抜け毛を机のひとところに集めておいていた事を、帰り道に落ちていたライターを目にしたとき思い出した。
思い出した頃にはすでにライターを跨いで通り過ぎていて、私はわざわざ5歩分引き返してライターをひらった。
抜いた睫毛を集める度「いつか燃やすんだ」と愚にもつかない抱負を浮かべ、そして忘れてをいつも繰り返していたのは、たちどころに忘れてしまう程度の念頭の置き方をしていたからで、それが執着や性癖にまで振りきっていたのなら、身銭を切って火元を買いにいっただろう。

私はその時が来たらをなんとなしに待っていて、その時がいざ来てみて、そんな暇つぶしを思い出しただけだった。それだけに、ライターの火を看取っても、さほど残念だとは思わなかった。

その日の夜は夢を見なかったが眠る前、父のライターを使って切ったばかりの爪を燃やしたときのことを思い出していた。
どんな匂いだったのか忘れたがくさかったのは覚えていて、クスクス音を出しながら細かくはぜる爪を見ながら、自分に痛みが伴ってないのが妙だったのを回想しているうちに眠っていた。
目を覚まし、いつものように歯を磨きに流し台ヘいくと、磨りガラスから伸びた細いひかりが横に倒れているライターにかかっていた。ライターは綺麗な薄緑色で、火を出す金具の部分は輝いていた。私はライターがもっと目立てるようサッシの傍にライターを立てた。



[66] お座敷にて

投稿者: ボーフラ 投稿日:2016年10月 6日(木)11時00分40秒 p131.net059084000.tnc.ne.jp  返信

料亭の二階のお座敷である。

三味線の四重奏、かっぽれ、かっぽれ、よいとさーよいとさーと、俺と部下の鈴岡はお座敷に居た。俺たちを招待したモルガン商事のモルガン卿は、未だ来ない、酷く居心地が悪い。お座敷芸者たちは、高砂のでんでん太鼓がめでためでたーの、等々唄っているが、俺たちはどうすれば良いのだ。

鈴岡が足を崩した。俺は欄間の龍と睨み合って、調子外れに手拍子を打った。コンパニオンがお膳を持ってきた。白菜の漬物と、御粥、そして味噌汁だ。芸者がすうと居なくなって、入れ替わりにモルガン卿がやってきた。モルガン卿はその巨躯を俺と鈴岡の間に捻じ込ませて、

「マイナスドライバーはないですか?」

と、肩をすくめた。これは彼の十八番のジョークなので、

「オルタナティブも真っ青よ」

と返さなければならない。雨が降ってきた。酷い雨だ。横殴りの雨がこの界隈に叩き込まれる。水着のコンパニオンがやってきた。という事は、これからセメントの談合が始まるわけであって、俺と鈴岡は分度器で床の間の柱が87.6度である事を指摘して、そこからの黒田節を披露する、何時ものパターンだ。



[64] ジョイフル

投稿者: いなずま 投稿日:2016年 9月15日(木)23時24分5秒 KD119104101021.au-net.ne.jp  返信

イチローが嫌いだ。あの人を見ていると、ジョイフルの窓ガラスを割って器物損壊で現行犯逮捕された斉藤さんを思い出すから。イチローに似ているだけの斉藤さんはジョイフルの件で地元の新聞にも載った。
訊いてもないのに斎藤さんはよく「この服BEAMSで買った」と休憩室で言ってた。

あと運転免許センターの態度のでかい職員が嫌いだ。



[63] 静岡ゆるキャラ考

投稿者: ボーフラ 投稿日:2016年 9月15日(木)16時27分40秒 p180.net059084001.tnc.ne.jp  返信   編集済

静岡のゆるキャラ、出世大名家康くん。最近では、出世法師直虎ちゃん、というのもいらっしゃる。井伊氏は良門流藤原氏の出自で平安末期より遠江引佐郡井伊谷に土着し、井伊氏を名乗っている。井伊氏で最も有名なのは幕末の大老、井伊直弼であろう。徳川四天王の井伊直政もいる。遠江は静岡県西部であって遠州つまり浜松方面である。直虎ちゃんが静岡のゆるキャラである事に疑いはない。

ところが家康というのはどうだろうか。生まれはまず、岡崎城、三河であって現在の愛知県である。幼少の頃には今川義元の人質として駿府(静岡県中部)で暮らした事がある。今川氏に従属して桶狭間の戦いを機に三河で独立した。三河、遠江、駿河、甲斐(山梨県)、信濃(長野県)の大大名となって後、関東に移封となった。だいぶはしょるが、将軍を引退して大御所になってからは駿府で秀忠(家康の子で将軍)を後見し、墓所は遺言により静岡市郊外の久能山、その後日光の東照宮に改葬。

つまり静岡県(=遠江、駿河、伊豆)限定ではなく、縁の深いところで云えば、まず愛知県(三河)である。事あるごとに「三河武士が云々~」というのは、軍記物で語られるところだ。静岡県専属のゆるキャラという事になれば、ちょっと、待ったをかけたい気持ちがある。

そして厄介なのが、直虎ちゃんの家、つまり井伊氏も、徳川家の譜代だという事である。井伊氏は、まず徳川四天王である直政の時に関東移封時に上野箕輪城で十二万石、関ヶ原後に近江佐和山で十八万石、その後は彦根藩に移り三十万石である。ここで「ひこにゃん」と被ってしまい、これもある意味アウトのような気がするのである。幕末まで彦根藩ですから。

だからと云って、純粋に静岡の大名という話になれば、今川氏を採用せねばならぬ。足利尊氏に従った今川範国が駿河・遠江の守護に任ぜられており、その南北朝の乱の頃から守護職を世襲、少し中略して戦国期、氏親、氏輝、義元、そして氏真まで来て、戦国大名としての今川家は滅亡し、その後は江戸幕府の高家として扶持を得る。その他今川の家臣団というのは家康に吸収されている。あ、そうすると、結局家康じゃん?という事になるのか。

しかしながら、南北朝の時代よりの守護大名、今川氏を最終的に滅ぼしたのは徳川家、そして武田家に北条家である。その、滅ぼした張本人のですね、家康をですね、恥も臆面もなく、出世大名家康くんとして、静岡のゆるキャラとして戴いて、っていうのがですね。

どうも、引っかかるんですよね。山梨の人は、ちゃんと武田家を尊敬しているでしょう。静岡の人は、今川家に対する気持ちが弱いのが、悲しいなあ、と思うわけです。

周延 『桶狭合戦之図』明治30年(1897)
http://morimiya.net/online/ukiyoe-syousai/M090.html

今川家というのも、色々と研究されているわけですし、もう少し、何とかならんかなーと思います。これは負け戦に入った時期も関係しているでしょう。桶狭間の戦いが1560年、ここから負け戦続きで、氏真が領地喪失したのが1568年。天目山の戦い(武田氏が滅びた)が1582年です。今川氏は、皆さんが興味を持つ戦国時代の時期に、見せ場がなかったのです。戦国時代と云えば、信長、家康、秀吉ですから、これに合わせて活躍しないと、後々の講談だの軍記物だの歌舞伎だので、表現してもらえなかったのです。

表現してもらえないと、庶民の間でもイメージがありませんので、現在のような事になってしまっているんですね。残念です。

##戦国人名事典 コンパクト版 新人物往来社をだいぶ参考、引用して書きました。良い本です。####



[62] 世田谷ウォーキング・デッド シーズン2

投稿者: いなずま 投稿日:2016年 9月 6日(火)23時34分43秒 KD119104101236.au-net.ne.jp  返信

「アアアアアアア」とか「オオオオオ」しか発声できないゾンビ喉になり、見た目もゾンビになった清水圭だが、精神はゾンビに明け渡していなかった。
その醜い呻きに微かな関西訛りが入ってるのを、小窓越しのビートたけしは聞いた。
「なあ、あいつまだ人の尊厳みてえなのにしがみついてるよ」
所さんはMA-1にしこたまアップリケを貼り付けながら「あっそ」とビートたけしに返事した。
「アアアアアアア(大御所ともなればワイプで抜かれとっても頬杖崩さんし、ニヤケもせんでええから羨ましかったわ)」さながらワイプとも言える小窓から見下ろすビートたけしを見上げながら、ゾンビ清水圭はゾンビになったのをいいことに、ビートたけしへの愚痴を吐いた。奇跡体験アンビリーバボーを思い出していたのだ。
するとそのとき、世田谷ベースのシャッターが音を立てながら5センチほど開いた、と思えばまた閉まった、そしてまた5センチほど開いた途端に閉まった。それを何度か繰り返されながら、ゾンビ清水圭は、これは、所さんが得意とする、遊び心か?だとしたら笑われへんでと呻いた。ワイプ越しのビートたけしが笑っている。



[61] 冤罪 不磨の大典 

投稿者: ボーフラ 投稿日:2016年 9月 5日(月)20時46分49秒 p180.net059084001.tnc.ne.jp  返信

今年は平成35年である。探偵社で大正元年の交通ダイヤを調べて、その年の10月25日の冤罪を証明する事になった。当然時効であるかと思いきや、不敬罪には時効はないらしい。今も、169歳の男性が巣鴨プリズンで冤罪のまま服役している。私の正義感が火焔となり、猛烈に調べ始めた。国会図書館までの定期も買った。

調べている途中で、アマチュア無線の面白さに気付き、今日も火星人と繋がらないかと夢想しながらアマ無線している。探偵社は廃業して、今では、立派なアマ無線士です。(でも、最近は地下アイドルも魅力的で、女装もしたいと思ってるの。僕、今年、これでも白寿なんです!)



[60] 世田谷ウォーキング・デッド

投稿者: いなずま 投稿日:2016年 8月31日(水)05時49分32秒 KD119104117134.au-net.ne.jp  返信

世田谷ベースのシャッターは堅牢に閉ざされたままだった。
清水圭はそれでも所ジョージを呼び続けた。
「頼んますわ!所さん!すぐそこまでゾンビ来とるんですわ!」
二階の小窓から、清水圭がゾンビになっていく様子をビートたけしと一緒に見下ろす所さん。
シャッターを引っ掻く、かつては清水圭だったゾンビの眉間にダーツの矢を一本打ち込み、所はこれからの冬に向けMA-1の改造にとりかかった。



[59] 先生、時間です

投稿者: ボーフラ 投稿日:2016年 8月28日(日)08時19分16秒 p180.net059084001.tnc.ne.jp  返信

秘書の一日は、先生が深夜に書いた猥談をリツイートする事から始まる。それから先生の家の前のゲロ・糞尿などを片付け、手紙を二、三通書いた後、やっと朝食、それから先生を起こしにいく。先生は豚人間であるからして、大量の飼料を与える。あと数年もすれば、出荷できる、それまでは先生だ。

先生は、PCだけは人間並みにできるが、あとは豚と同程度の事しか出来ない。先生の自意識は、その猥談のツイートから推察されるのだが、単純な猥褻語と簡単な文法で書かれたもので、文章上の間違いも大変多い。それでも豚にしてはやれるのだから、先生、と呼ばれる豚人間である。

嫌になったので、前倒しで出荷したい、そのために、方々に手紙を出している。動物愛護協会はむしろ前向きであって、巨大な反対の壁と立ちふさがっているのは、日本野鳥の会であった。反対の所以というのが、複雑に絡み合っており、まわりまわって日本野鳥の会が反対をせざるを得ない状況に追い込まれた。

先生は、飼料を食べると、麻袋の中のコーヒー豆をもすもすと食べ始めた。秘書は、タクシーを呼んだ。嫌で嫌でしょうがないがこれから先生の講演である。ばりばりとコーヒー豆が砕ける。ただ砕ける。

先生は、コーヒー豆を、食べ続ける。このままでは、講演に連れていこうとしても延々と喰い続けるであろう。秘書は指を打ち鳴らし、踊った。本小説上の、ミュージカル・パートである。豚人間のために歌うのであるから、実に卑屈なものである。

「先生!時間です♪往きましょう~」



[58] アントニーが一瞬出てくる物語

投稿者: いなずま 投稿日:2016年 8月26日(金)21時07分7秒 KD036012081218.au-net.ne.jp  返信

「ほんなら逆になんに興味あんねん!!!」収録中のスタジオ内に宮迫の怒号が響いた。それはツッコミにしては声音を違えた咆哮であり、説教というにはあまりにも短かく、もっともバラエティーの場に粗ぐわぬものだった。それは宮迫が自身の言下に一番痛感した。その痛感によってさらに継ぎ足してしまいそうだった憤懣を押し留めた。そこだけは番組MCの役回りに立ち返ったのだが、それも最早手遅れなのは、観覧席の女達がなびかせる張り詰めた静寂を聞けば察するにあまりあるものだった。

その日はアメトー-ク「外出るとき、靴履きます芸人」の収録であった。
水を打ったように静まり返ったスタジオ内で、蛍原の返答を待つひな壇の出演陣。
やってもうたと思慮を欠いた自身への怒りと悔みを滲ませた目で、真横に座っている蛍原を見つめる宮迫。
この回も前回、前々回同様に、神回と謳われることはないにせよ、危なげなく終えられる上等な回だと期待していたスタッフ一同は不測の事態に自らの、表立たせていなかったにせよ、奥に潜めていたその慢心を呪い、青ざめていた。
普段から眇めている目をさらに細め、瞬く必要を疑うテグスのような目をしたまま、蛍原は自若と押し黙ったままだった。

この時の出来事を、のちにすべらない話で披露するケンドーコバヤシは「ここはおれが行かなヤバイなっていう使命感みたいなのがあって、」とエピソードの中盤あたりに語ることになるのだが、内実は「使命」と義勇めいた美しいものではなく、背中で感じたひな壇からの視線、横に座っていたサバンナ高橋とチュートリアル徳井ではない方両名による不可視も甚だしい圧力に駆られてのことであり、且つケンドーコバヤシ自身によるある種の繊細さ、逃れることができない生来の自意識が祟ってのことだった。
さしずめ、やむを得ず堰を切らされたといったところであった。

「まあまあ、宮迫さん、僕も、まあ、思ってましたよ」
動揺が吃りとして表れたが、軌道修正に取り掛かったケンドーコバヤシのビターな声を耳にしたプロデューサー、スタッフ一同は、今回も手堅い面子で組んでおいてよかったと、一握ではあるがそのささやかな安堵をそれぞれの胸におとした。この収録自体のお蔵入りを恐れていた宮迫もプロデューサーと時を同じく束の間の安堵をし、ケンドーコバヤシが敷き直してくれたレールを踏み外すまいと埋め合わせに取り掛かった。

「せやろコバ?どの回でもやで、先週の『コンビニで売ってるめちゃくちゃ分厚い漫画、机の下とかベッドの下とかにかませて高さ調節してます芸人』でもそうやん、その前の『楽しみにしすぎちゃったあまりに3時間はやく着いちゃってた芸人』でも、初っ端から興味持ってないし、知ろうともせんねん。今回もそうや」
「確かに、蛍原さんが興味あるもんって我々、正直あんま知らないですもんね。前やった旧車芸人の回でも、興味あるかなと見せといて、結局車買わなかったですもんね」
先輩に堰を切らせてしまった負い目からだろう。後ろに座っていたハライチ澤部も吉本色が強い現場の黒一点でありながら果敢にもこの流れに加勢した。
「いや、でも蛍原さん、だいぶ前の競馬芸人の回の時、めちゃくちゃ楽しそうにしてませんでした?僕テレビ見てて、あ、蛍原さんも趣味とか興味とか持ってんだなあって」
これを挽回のパスと踏んだ宮迫はキメ顔で言い放った。
「澤部、あの回楽しそうにしてたやろ?でもな、あれ。あれが最初で最後やってん」
「え!嘘でしょ!!!最初で最後!?」
澤部のこの過剰なまでのコミカルなリアクションは、観覧席に座っていた女達幾人かの凍っていた表情をほどけさせた。その氷解のさざめきを聞きとったサバンナ高橋はこれを皮切りにと、隣で膝に肘を置き、両手を祈りの形に組み、俯いたままのチュートリアル徳井ではない方を尻目に、追随を試みた。
「いやいやいや、宮迫さん、最初で最後ってことないでしょ~。僕、北海道が好きとかも聞いたことありますよ。ね~蛍原さん」
応じる様子を見せない蛍原にケンドーコバヤシが投げかけた。
「毎回始まるときに『今日はなんのくくりですか!』って僕らに元気よく尋ねてくる割に、自分はなんのくくりやねんって僕ら、蛍原さんに対して常々思ってましたからね」
観覧席の女達の笑い声が僅かではあるが先程よりもはっきりと聞こえた。
宮迫はここしかない、とばりに
「そや、コバの言う通りや、おまえは結局なんのくくりやねん!」

キマったはずだった。ここで必ず蛍原は応じてくるものだと。

それでも、蛍原は黙ったままだった。

バラエティーの現場はともかく日常生活においてもあってはならない、間、があたりに立ち込め、さっき思いがけず作ってしまった深刻な状況へ舞い戻ってしまったと宮迫は一気に憔悴した。

のちに、この状況をすべらない話で披露するケンドーコバヤシは「宮迫さんの心が完全に折れる音が、ハッキリとですよ、ホンマにハッキリと聞こえましてね、」と描写することになる。

共感能力が抜群に高い優れた芸人であっただけに、宮迫につられて同じく心を折っていたケンドーコバヤシだが、ひな壇勢の中でも一番の先輩としての意地と責任に気圧され、それでも尚ダメ押しに、蛍原さん、と呼びかけようとした。その後に続く言葉は考えていなかった。その時だった。
すげないままだった蛍原は決心をあらわに勢い良く立ち上がった。

固唾を呑みながら、演者達が一方的に蛍原へ話しかける様子を見守っていたプロデューサーは、とある危惧のため、制作側でありながらこの収録が潰れることを一人願っていた。
その密かで暗鬱な願いは叶わず、ついに恐れていた危惧が白日のもと、蛍原の口から開陳された。

「幽閉されてんねん」

「なにゆうてん」
蛍原の予想だにしていなかった第一声に、宮迫はツッコミではなく、疑問をつぶやいていた。
「急にしゃべった思たら、なんやねん『幽閉されてる』て!」
出演陣は宮迫のツッコミに示し合わせていたかの様に一気に笑い、その笑い声は観覧席の女達にも波及させる気概に満ちたもので、女達も収録成立を支えようとする協力の笑いを各自が適宜に出しはじめた。
そのぎこちなさに、蛍原は蛍原なりに胸を痛めながらも続けた。
(チュートリアル徳井ではない方も ここが甲斐性あるところの見せ時だと協力的に笑っていた。)

「ほんまの幽閉や、閉じ込められてんねん。このテレビ朝日の地下88階におれの部屋あってな、部屋っていうか牢屋や、おれ、そこから、アメトーク始まって以来出たことないねん」


「ウケてへんやんけ!なんちゅうボケや!」宮迫が蛍原の頭をキレ良くはたいて、やっとスタジオ内に、自然で活気ある笑いが戻った、にも関わらず、これを聞いたプロデューサーはスタッフらに、観覧席の女達を帰すように指示を出し、スタジオ出口の前にまたたく間に長蛇の列が出来上がっていた。
サバンナ高橋、ハライチ澤部、黒人のアントニーは立ち上がり、只ならぬ状況を前に「え、まじすか、どうしたんすか」と狼狽えることしか出来ぬ木偶の坊と化していた。

矢継ぎ早にプロデューサーはインカムからなにかしらの指示を出した。するとセット裏手からジャスティン・ビーバーを取り巻くガードマンほど豪然たるスーツ姿の巨漢2人が現れ、演者たちのいる一段高いセット内に不躾に立ち入り、蛍原との間に割って入り込もうとした宮迫、ケンドーコバヤシ、をコーナーで使うはずだったパネルの方へいとも簡単に払い飛ばした。
他愛がないだけに手際よく蛍原を羽交い締めにし、おとなしくなったところにアイマスクをかぶせ、蛍原は流れるようにして肩に担がれた。

巨漢の肩越しから房のように垂れた蛍原のマッシュルームヘアーは、カメラ数台を掻い潜り出口へ連れ吸い込まれ往く。照明に照り返す楕円のキューティクルは乱れては、元に戻り、乱れては、戻っていた。
その相方の様子を宮迫は、割れたパネルの上で横たわったまま為す術なく見送るしかできなかった。

チュートリアル徳井ではない方は、今回の収録の企画意図を汲んで履いてきた靴の、その浮かれた発色に憂患し、人知れず静かにデッキシューズ脱ぎながら、攫われる蛍原の薄暗くなっていくキューティクルを眺めていた。



[57] 悪夢

投稿者: ボーフラ 投稿日:2016年 8月22日(月)18時02分41秒 p180.net059084001.tnc.ne.jp  返信

「ホームレスのジジイのくせにエロい声で歌いすぎや!」

健坊は叫んだ。川が溢れている、いや、今にも溢れんとしている、その際にホームレスが居て、健坊は中州に取り残されていた。ホームレスは健坊を救出するでもなく、勝手に救助用の倉庫からゴムボートを出してきて、歌をうたいながら下流に流されていく。

健坊は中州からそれを見ていた。中州は、本来であれば、増水によって河底に沈む筈であったが、夜間飛行の飛行船が沢山の土嚢を落としていった為、それが防波堤となっていた。その土嚢を発見したのは健坊が最初であり、それらに気を取られている間に、上流で集中豪雨があり、突然河が増水したのである。

ホームレスのゴムボートは何故か、下流への流れに逆らって、その場に留まっていた。流れようとしても流れないのである。健坊は発作的にまた叫んだ。

「何だよ、大人の癖に助けないのかよ、やっぱり『乞食』だな」

健坊は、自分の口から、『乞食』という言葉が出た事にハッとした。呼気が荒くなっていく。健坊の呼気が。ホームレスは、その太い手で流れを手繰り寄せて、中州へとゴムボートを急に横付けした。健坊はびっくりして、今度は呼気が深くゆっくりになった。息を止めていたかも知れない。

「お前、乞食と云ったな」
「そうですとも!あなたこそ、僕を見くびっているんじゃないですか」

その頃、パーラーでは、健坊のママと、ホームレスの妻の弟が、密会していた。いわゆる不倫である。アイスコーヒーの氷は全て溶け、言葉もない。それは不倫の爛熟と終焉を示していた。マスターが、三日分のカレンダーを破り取って、灰皿を交換したり、ラジオのスイッチを入れたり、切ったりした。

喫茶店の外は摩天楼で、野生の猿が、ビジネスマンと一緒に疾走している。映画の撮影なのである。これをネット配信して、ロスアンゼルスに直ぐ帰りたい。

健坊も直ぐ帰りたい。健坊は隙を見てホームレスの腕の下を搔い潜り、ゴムボートに飛び乗った。飛び乗った勢いでゴムボートは其の儘流れていった。ホームレスは、エロい声で嘆きの歌を歌いながら、

「本番、本番なのかよ」

と朗々と、筋違いのツッコミをした。喫茶店のアイスコーヒーは、溶けた。逢瀬の二人は一滴も飲まず、煙草だけを吸ったようである。

これが、今年の皆既日食の間の出来事であった。



[56] 宿命(さだめ)

投稿者: ボーフラ 投稿日:2016年 8月20日(土)19時07分20秒 p180.net059084001.tnc.ne.jp  返信

自由詩「宿命(さだめ)」

宿命と知れど
牡蠣の殻を叩き割る時
眉間の皺が 天井に突き刺さる

その度 天井に穴を穿つのである

グッドモーニングの替わりの珈琲と
グッドバイの替わりのクッキーを
ホテルボーイから奪い取って

流れ流れて やっぱりタウンワークの頁は
何時も「海鮮関係」で指を止める

思い出すだけで
口からタラのすり身が零れるのです。



[55] 機動戦士

投稿者: いなずま 投稿日:2016年 8月18日(木)19時58分11秒 KD036012084224.au-net.ne.jp  返信

またビヨークが、泥のついたガーゼをどこからかひらってきた。もう素面じゃやってられないみたいだ。
アイスランドガンダム(以下ILGとする)を修理していた私は、眼前でちらつかされたその汚い布を、邪魔だ、と手の甲で払いのけ、口に僅かに入ってしまった砂利を、プッと弾きとばし、ILGの人間でいうところのくるぶしの溶接を続けた。

ILGはビヨークにしか動かせない。ビヨーク自身の虹彩認証を済ませ、Human Behaviourの一小節を本人の声で歌いそこで初めて起動する。
攻撃は、崖や近辺にある石くれ、岩くれをこそいで投げる。「岩投げ」を得意としている。小屋があり次第小屋も引き千切っては投げる。

コックピットはかつて、胸の真ん中あたりにあったカプセル状のへんなやつの中にあったが、ビヨークの加齢とリクエストに合わせ、腰、脹脛と降下し、いまや右のつま先となっている。
左のつま先も昨年まではコックピットとして機能していたのだが、アカデミー賞授賞式時に来ていた白鳥ドレスが、アクセルの隙間に挟まったり、アジフライがシートの隅に落ちて放置していた結果に異臭がしたり、最新アルバムVulnicuraのジャケットで着用していた無数の綿棒みたいなのが精密機器やサイドブレーキの隙間に入り込むもんだから、いまやもうゴミ屋敷同然の使いものにならず、異臭異汁が漏れ出ている。そのせいで左足周辺に生えていた芝生も枯れ朽ち、見たことがない色のキノコも生えていた。

いうてもババアなのでビヨークは。バリアフリー機能拡張のため手すりを付けてあげていたのだ。コックピット入り口となるドアの蝶番も緩んでいたせいで隙間風がひどかったのも直した。
腰をかけるにはちょうどいい岩場で、今くるよのような服であぐらをかいたまま見たこともない色のキノコを齧っていたビヨークに完成を伝えると、食べかけのキノコを投げ捨て、こちらに一瞥もくれずにすぐさま右つま先のコックピットに駆け寄ってドアノブをひねり中へ入った。やたらにふくよかでビビッドなドレスの裾を、締め切ったドアからはみ出させたままで。

腐って錆びた左足を引きずりながらではあるものの、全長が80メートルもあるとは思えないほどの快活な動きでILGは、大平原をウォーミングアップとばかりに轟音を立てながら駆け、群生していたヒナゲシを踏み散らし暫くすると、未舗装路を挟んだ向かいにぽつんと建ってあった白い小さな教会の前で立ち止まった。
きしきしとゆっくりかがみながら、LIGはその教会を片手で手中に収め、あっけなく持ち上げた。
バキバキと音を出すそれを、初代コックピットであった胸元にまで引き寄せながらさらに粉々に握りしめ、勢い良く振りかぶり、自分がいま搭乗し、操縦している右のつま先に叩きつけた。のだが、コックピットの屋根である足の甲が多少へこみ、教会全体に塗り込められていた白ペンキの剥離が、雪のようにはらはらと舞っただけだった。
コックピットのドアの立て付けも少し歪んでいたのか、内側から五回ほど蹴つりあげて脱出したビヨークは、勢い良く外気を吸い込んだ途端に、高笑いしながら、周りに散乱する先刻まで教会だったはずの建物を、その瓦礫をスマホで連射撮影していた。

まだ腹を押さえたまま笑いが止められず、高いヒールで柔らかい芝生や瓦礫の隙間を縫って小走りするものだから、よろめきふらつきこっちに向かってきたビヨークは、さっき撮ったばかりの教会の残骸画像を、膝に手をつき息を整えつつ見せてきた。
一枚ずつスワイプしてくれていく中、これ、とビヨークは指を止めた。
ピンチアウトで拡大されたそこには、白い十字架の上の短い棒だけが、芝生に倒れているだけ、が写っていた。もっとよく覗き込んでといわんばかりに画面を差し出しビヨークは笑っている。
近所のダイエーのお惣菜コーナーのおばちゃん店員にやっぱ似てるなと改めて思った。目尻、口元とか。

その十字架の短い棒以外にあたる、Tの部分は粉々で見当たらなかったらしい。ミサのない平日でよかった。

https://youtu.be/36Srr08PN_Y



[54] 隣市の水は冷たい

投稿者: いなずま 投稿日:2016年 8月18日(木)05時21分56秒 KD036012075096.au-net.ne.jp  返信

小学生時分の夏休み、弟と自転車で片道一時間半かけて隣市の市民プールまで行ってた理由は、自分が住んでる市の市民プールより小綺麗で、流れるプールの一周が長く、アトラクションの数も多く、そして水が冷たかったからだろう。

付き添いの父兄らが避暑するピロティの上はバルコニーになっており、流れるプールの中で水遊びに興じる面々を見下ろしながらカップラーメンなども食べれた。
そこには会議机を横に4脚並べてつくった簡易売店があり、カップ麺等もそこで買え、机の端では湯の入ったポットも2台常備されていた。
僕ら兄弟は、この市民プールの常連だったため、簡易売店に積み上げられたカップ麺のラインナップをとうに熟知且つ見飽き食べ飽きていた。
だから本日はと、お楽しみの一環として行きしなのローソンで、あの簡易売店には置いてないスパ王とバソキヤをあらかじめ買ったろうや。という天才にしか思いつけない新機軸を思いつき、実行した。

流れるプールを弟と5周ほどしたら腹もすく、ていうか自転車で一時間半かけて辿り着いた時に結構すいていた。
弟とロッカーに戻り、買ってきていたスパ王とバソキヤを携えピロティの上へ。簡易売店の端にあるポットの前で、ゴソゴソと蓋を開けようか、かやくをまぶそうか、の支度をはじめようか、のところで簡易売店のおばさんに制された。
「ここで買った人にしかそこのお湯つかえないから」

おれは人生で一度だけタイムリープができるのならこの瞬間に立会いたいと思ってる。そしてクレーマー根性でのべつ幕なしにこのおばさんに罵詈雑言にも等しい正論じみた詭弁で、打ちのめし叫びちらし精神をへなへなにさせてやりたいと、この出来事を思い出すたびそういったシュミレーションをしている。

僕ら兄弟は、喉のかなり手前で溜飲を残したまま「らしいよ」とお互い顔を見合わせ、封も僅かにしか開けてないスパ王とバソキヤをローソンのビニール袋にしまい、共に席に戻った。

その一部始終を見ていたのだろう。僕らより二学年ほど下の少年を連れた父親らしき人が、簡易売店で買ったUFOを持って近づいてき
「いまからお湯切るんだけど、まだ熱いと思うから使う?」と残り湯の二次利用を提案してきてくれたことに、おれは小学生ながらに、まじで言ってんのか。と声には出さなかったものの度肝を抜かれてのを未だに覚えている。
その場は弟の「いや、むりだと思います」で解決したこともしゃんと覚えている。

僕らはもう帰ろうかと着替えて外を出た。
市民プールと公道の間を仕切る銀のガードパイプ。そこに接合された銀の四羽の雀。自転車を走らせたままそれをはたくと、とても熱かったのも覚えている。



[53] キングコング奇譚

投稿者: ボーフラ 投稿日:2016年 8月15日(月)16時09分55秒 p180.net059084001.tnc.ne.jp  返信

キングコングがいた。大都会から逃げ出した野人たちは、海のない県にいた。青い山脈の向こうに、梶原がいる。Nは、西野だった。手を振っている。涙の別れだった。老婆は震える手で彼らを指差し、天才じゃ、好きじゃ、と言った。Nが特に好きじゃ、とイニシヤルで言った。

老婆は、西野に、覆い被さった。犯し、犯されようとしたのである。西野はその天才性故に、それを為すが儘に受け入れた。情事はゆっくりと始まった。梶原は、途中で飽きてしまい、青い山脈を眺めながら、ゴムを熱してその上に寝転んだりした。其の内、日が暮れたが、長い長い情事である、終わらなかった。梶原の熱いゴムも冷めてしまった。西野の、鉄工場のような熱く長い情熱も、次第しだいに冷めてゆく。言い換えれば、梶原のゴムが冷める前は、燃え上がる交情であったのであるが。

そして、流れ星が一つ。梶原は、一粒の梅干を食べ、情事の真っ最中である西野と老婆にも、梅干を一つずつ差し出した。西野も老婆も、集中力が途切れてきたのか、それを受け取る余裕があった。其の内、流れ星が、この海のない県にも墜落した。UFOの類も、次々に着陸した。あたりは騒然となったが、梶原はその庶民性故に、西野はその天才性故に、全く動じなかった。

火の手が上がった。老婆は、益々、その情熱が燃え盛り、西野を求めた。西野は、それに応えた。梶原は、カイワレ大根を食べながら、西野と老婆の背中に、炎の赤が乱反射するのを見て、こう思った。

「美しい」

本当の野人とは、彼らの事であると、思った。そう思ったのは、老婆の夫である老爺であった。老爺は、事の一部始終を、木の上から見ていた。何とも思わなかったが、ただ、たった今、

「彼らは本当の野人である」

と思った。そしてそう思うと直ぐに、虚無の感情が老爺を支配した。長い長い情事の末、西野は、終ぞ果てる事もなく、肌を離した。そして、西野は、消えた。梶原は、老婆と老爺の養子縁組の手続きをするため、三人で、公証役場に向かった。

消えてしまった西野は、

「夢のようだ」

と思った。夢ではないが、夢のようだった。西野は、消えた。



[52] 貝殻

投稿者: ボーフラ 投稿日:2016年 8月15日(月)16時08分10秒 p180.net059084001.tnc.ne.jp  返信

この窓から隣の病棟が見える。自販機で、珈琲を買っている。やはり背中合わせで、顔見知りの患者の家族が、
自販機で珈琲を買っている。もし、そちらの自販機で私が、珈琲を買っていたら、街の明かりが見えた事だろう。
もう夜も近付き、薄暗くなっている、夕焼けも終わり、そんな空と街を見たくなかった。

この窓からは、隣の病棟だけしか見えない。何の病棟かはよくわからない。地下で繋がっているのか、
中ほどの階層で繋がっているのか、最上階であるここと、隣の病棟は繋がっていない事は確かだ。

そのように考えた。

意識がそのように、考え事に及んで、ふと隣の病棟から目を離した間に、不思議なものを見た。
先ほどの、背中合わせの例の、珈琲を買った人が、隣の病棟にいる。歩いている。
これは、確かに、あの人だった。

この最上階と、隣の病棟のその階層は、繋がっているようだ。しかし、許可なく、病棟を右往左往する
わけにもいかない。確認したい気持ちはあったが、そのうち、医師との面会の時間が来たので、私は、その部屋に行き、用事を済ませて、病院をあとにした。医師はこれから手術があると言った。

隣の病棟は、正面玄関からは見えない。血の匂いの濃いようなところで、手術の病棟なのかも知れなかった。
だが、これは、ただの、私の憶測に過ぎぬ…。

病院の入口には、仁王像がある。ブロンズの仁王像で、土地のオーナーが病院に寄贈したものだ。
私は、その仁王像も、病院に行くたび、気にかけて見てみる。仁王像の足元には、今日は、
貝殻が落ちていた。ハマグリだろうか。白い。

空も街も、すっかり暗くなっていた。病院の玄関も、薄暗い、薄暗い、しかし、僅かな周辺のルクスが、
その貝殻の白さを教えていた。

隣の病棟へと、続く回廊。
仁王像の足元の、白い貝殻。

私には、その二つの事象が、相似形を為した、いわば貝合わせのようなものに感じた。
ぼんやりと、そのように考えた。

私は、歩いて、公団住宅に帰った。



[51] 組み木

投稿者: merumo 投稿日:2016年 8月13日(土)23時44分38秒 om126237054000.9.openmobile.ne.jp  返信

息苦しさで、孤独を圧死させようと躍起だった。
彼はひたすらに時間とお金を浪費し、味気ない会話に言葉を散布させ、時には約束を破ってみたりする。

それらが日常に同化してゆくにつれ、
私の生活は、ゆっくりと窒息の一途をたどった。
貧弱ながらも其なりに平穏だった暮らしが、内外から薄く磨り減っていくのが分かった。

母と子のサークル。
母親としてのサイクル。
女のするサービス。

それらを根気強く混ぜ合わせるには私の生き方のセンスと並んで、相手も賢くある必要がある。
底辺パズルは組み木細工の様に隙間なく組まれるものだけど、彼は様々な質の豊かさに欠け、組み木は徐々に不穏な歪みをみせた。

私は彼によって曖昧に組まれたパズルを、人知れず立て直さなければならないという事と、底無しの不安と欲望を受け続ける事に、もう耐えられなかった。

家に来る、飯を喰う、風呂に入り、電気を使う。
夜遅くまですり寄り、私を消費する。
保留の未来に寝そべって、名前の無い生活が続いた。

息をする度に、生活費が動くのを感じる。
サーモグラフィーの様に請求書だけが燃えている。
私は真っ青な指先で、真っ赤なお金を一人支払う。

彼には誠意も無ければ、先行きも見えない。
何となく将来を口にし、何となく居座り、別々の日は一日中連絡が来て、何処へも行けない毎日が連なる。
しかし其処に、何かを視た事が無い。
空っぽの愛情は、おもちゃのカプセルの様に胸にかさばっていった。

茹だる夜、惰性のLINEを携帯のランプが示している。
返答に困るけれど、いい人で覆われた様な顔文字に応じる。
もしも彼が何度も私を裏切らなければ、この恋は続いたのだろうか?
窓の外に、夏特有のざわめきが残っていた。

いいえ。

ざわめきが、怪しく私をまた独りにさせようとする。
愛に飢え、無差別に尽くす事でしか自分を守れなかった己の罪に打たれる。
何度も約束を破り、許される事で愛情を獲得しようとする彼を私は許す事が出来ない。

暗闇に光る画面には、白と緑の吹き出しが交互に表示されている。
ロボットの様に往来し、繰り返された言葉の帯。
膝の裏には時間をかけた汗がねっとりと溜まっていた。
緑と白の長い帯は、今日まで私をミイラの様にくるんできた。

吹き出しは、 あてどなく続こうとする。
私の組み木がカタカタと揺らぐ。

終わりにしよう。
草臥れ果てた部屋の中で
また独り、私は隙間なく組み続ける
あの日々を取り戻す事に決めた。

http:/s.ameblo.jp/kozue-bcbt



[50] エッセイ

投稿者: ボーフラ 投稿日:2016年 8月13日(土)03時51分28秒 p180.net059084001.tnc.ne.jp  返信

夜中に一回、起きる習慣があり、そうなるとそこから眠れない…という事がある。多々ある。しかし早目の就寝であるため、それで翌日支障を来すわけではない。

夜九時には寝ているため、そこから6時間寝れば午前三時である。睡眠時間は多ければ多いほど良いという考えの為、そこからの上積みが欲しい。しかし頭は覚醒している。

夜中に一度、起きた時、喫煙する。それがいけないのだと思う。夜中の用事を済ませて、直ぐ布団に戻れば良いのだが、それを励行しない為、不眠の状態になる。

そういう時は、つつがなく酒を飲んだり、愉しんだりするのだが、何とか、「眠って夢を見るのは楽しい事だ」という低いテンションに持っていかないといけない。眠る、夢を見るという事は大事であり、夢見の良さは現実の両輪である。夢見が悪いのは、まだ現実が噛み合っていない、かち合っていない、未整理の状態であるからだ。

現実が不具合を抱えていても、よくしたもので、夢見の良さで案外、カバーできたりする。現実も不具合、夢も悪夢ばかりではやり切れない。

午前4時ぐらいには、今日、一旦眠って、午前6時に起床しようと思う。



[49] エッセー:キウイとキチガイ

投稿者: いなずま 投稿日:2016年 8月10日(水)18時48分20秒 KD036012086136.au-net.ne.jp  返信

実家のバイク屋にキウイが二匹進入してきて父がおっかけて捕まえたという嘘みたいな現実を目の当たりにしたことがありますか?僕は、目の当たっちまったんですよね。
それきっかけで近所にキウイ飼いがいることが判明したの。結構ウケますね。
当時小学一年の僕からしたら、キウイ、鶏ぐらいの大きさでした。むちゃくちゃすばしっこくてバイクのエンジンのしたをくぐり、原付を飛び越えてたのをときどきなんだかよく思い出します。

家の前に、市役所へのショートカットにしか使われてない大きな神社があって、その敷地内の便所、ワンカップとか落ち葉の燃えカス、丸まったアルミホイルとか散乱してて、野良猫もふてぶてしく住む陰気な便所に、いつも皮脂で黄ばんだタンクトップを着る歯のないおじさんがいて、その近くを友達と通りかかる度におじさんは僕らを呼び止めて「あ、蚊おる」パンっと友達の腕をはたいてきたり、僕にデコピンし「あ、蚊にげたわ」ってしょうもないことをよくやっくるおじさんいたけど、あいつはマイルドに言うと、キチガイでしたね。



[48] ふるさとの風景

投稿者: ボーフラ 投稿日:2016年 8月10日(水)17時07分10秒 p180.net059084001.tnc.ne.jp  返信

お婆ちゃんの棺桶の蓋が開いたままでした。実家の方からそう言ってきました。わたしは、高校三年生の娘に家の事を頼んで、実家に戻らないといけません。

電車に乗ります。電車は一回だけ乗り換えて、あとはバスに乗ります。実家の方から来たメールによると、お婆ちゃんを火葬したつもりだったがしていなかったそうで、棺桶は納屋の中に入っていたそうです。棺桶の蓋は、馬小屋の中にあったので、気付いたそう。

電車に乗り換えます。またメールが来ました。お婆ちゃんの棺桶の蓋と、棺桶がサイズが合わない。このままでは蓋をする事ができない。あと、お婆ちゃんの亡骸が温かくて、まるで生きているようだって。既に火葬の日から十日以上経っています、真夏ですから、わたしは、腐っているんじゃないの。と返信しました。

バスに乗ります。最終の一個前です。月が出ています。畦道を通って、煙草屋の向かいの中くらいの農家がわたしの実家です。

「あんれー、良子、いきなり来たでえな」
「お婆ちゃん!死んだ筈じゃあ!!」

お婆ちゃんは生きていました。何故甦ったのか、そのあたりの事情がわからないのですが、実家の方の人間も、良かった、良かった、とだけ言っていました。棺桶から甦ったあたりのくだりが不明瞭なのです。わたしは実家の人間を問いただします。

「でもねえ、呼び出されて、どういうタイミングの兼ね合いで、こうなったのよ」
「良子さんねえ。難しい事ってあるのよ。説明するのがねい」

わたしは、はぐらかされているような気がして、棺桶を蹴っ飛ばしました。痛い。つま先が痛い。何て固い棺桶だろう。

「良子お、あだすの入っていだ棺はなあ、樫の木でできているんだで」
「お婆ちゃん!」

樫の木!そう云えば、裏庭に樫の木があった!わたしは、実家の人間もお婆ちゃんも突き飛ばして、裏庭に駆け出します。

「あれ…」

樫の木はありました。いや、それは樫の木ではなく、桜の木でした。わたしの思い違いという事でしょうか。お祝いをするので母屋の方に来い、と、実家の人間が声を出しています。わたしは虫の音に気付きました。

もうすぐ、初秋でしょうか。



[47] このアリバイがダサい

投稿者: 義ん母 投稿日:2016年 8月 8日(月)20時41分6秒 p846ec2.tokynt01.ap.so-net.ne.jp  返信

くたびれたトレンチコートに身を包んだ50過ぎと思われる男が、
深夜に突然、玄関先に現れた。よく見えれば後ろに整髪剤で固めた肌艶の良い
精悍な若者もいた。私、こういうものです。そう言って差し出してきたのは
間違うことなく警察手帳。阿諛の間、状況を把握しそこねては眉間に皺を寄せっ放しの
俺に対して、刑事は更に言葉をつづける。
「昨日の晩、近くで女子大生が殺される事件があったのはご存知ですよね」
無論知っている。俺が起居するこの襤褸屋よりほど遠くない工業高校の裏手にて
近くに住む女子大生が何者かによって刺殺されたというのだ。
「そこで、大変失礼ですけど…」ここにきて後ろに隠れていた若者が前へ乗り出す。
「捜査の参考にしたいので、一応で結構です。昨晩、何をされていたのかをお聞かせいただけますでしょうか」やはり、この質問が飛び出した、俺の眉間にますます皺がよる。

確かに俺は昨晩、この家で調べものをしていた。
何度も完成した資料を先方に提出しているのでアリバイもばっちりである。
然し、絶対に言いたくない。
何故か。俺は昨晩、まんじりともせずに「性感帯としての乳首」などの資料を制作していた。
「貧乳が感じやすいってホント?」などをところどころ太字にしながら。
深夜の特番でどうしても必要なのだ。致し方ないではないか。
言葉に窮する俺を見て、訝しげな視線を刑事たちは向け始める。
違う。アリバイはばっちりだ。しかし、そのアリバイがダサすぎる。

「もう一度、お伺いします。昨晩、あなたはここで何をしていましたか」
俺は嫌だ。25にもなって乳首を太字にして生計を立てていることなど、
初対面の刑事に知られたくない。こんなことが露見するのであるならば、
俺はいっそのこと「女子大生を刺殺していました」と述べたい。述べたい。述べよう。
「昨晩はですね、女子大生を刺殺していました」。述べてしまった。

アリバイがダサいあまりに、「職場で尿を漏らしたことのある女性の割合」を調べている余りに、犯してもいない罪を認めてしまった。ところが、この供述によりあっという間に家宅捜査が行われ、俺が昨晩まとめた
「よくわかる乳首」資料データも押収されてしまった。

結句としてこれがアリバイ証明となり、俺は警察から一晩中乳首を丹念に調べ上げた挙句
女子大生を殺したというウソまでつく要注意人物に成り下がってしまった。

上記文章は全てシミュレーションである。とにかく今の俺のアリバイはダサい。
そして今宵のアリバイとなるのは「美魔女のアンダーヘア事情」である。
頼むから女子大生よ、殺されないでくれ。俺はアリバイを証明したくない。



[46] イノウエさんがおれの要望を飲まないわけがない

投稿者: いなずま 投稿日:2016年 8月 5日(金)00時59分10秒 KD036012089119.au-net.ne.jp  返信

「イノウエさんすいませんボールペン一瞬貸してください」
「はい300円」
「え~一瞬だけですからお願いしますよ~いいっすか~?」
「はい300円」

おれはバイト先の先輩イノウエをブチ殺そうと決めた。
いや「決めた」なんて事後的な決意でなく、おれはイノウエを殺すために生まれてきたのだ。とさえ思える。安らかにして清らかな気持ちでだ。イノウエを殺す使命を物心をつけるが如く思い出したに過ぎない。

「はい300円」
イノウエはこの金銭せびりが実際に痛快とでも思ってるのだろうか?こちらにウケてると思ってるのだろうか?こういうのって同じ人に2、3回以上やったら駄目だと思っていた。こちらの実感とは裏腹に結構な手応えをゴイゴイに感じているのだろうか。じゃないとこんなしこたまに金銭せびりを繰り出せるわけがない。
つまり、一般的には対価を支払うまでもない些末な要望に対して、横暴にも金銭の見返りを求める、この無軌道な振る舞い、トリッキーでユニーク且つ実に愉快でしょう。といった腹だろうが面白くもなんともない。

「そこの棚の上、そう、その皿取ってもらっていいですか?」
「はい300円」
「ちょっとトイレ行ってきます」
「はい300円」
「インカムの電池なくなっちゃって、場所わかります?」
「はい300円」

非常につまらない。ゴミだと思う。苦痛だ。もう「はい300円」に対するおれの返答バリエーションも尽きた。「え~堪忍してくだせ~」みたいなへつらい譲歩をおれは何度声色変えて繰り返してきたことか。
イノウエがいたのなら面接時に店長の口からそう言って欲しかった「頼みごとをするたび、その都度、面白いと思って金銭をせびってくるあの面白くないやつを頻繁にやってくるイノウエが居ます。それでも君はここでバイトが出来ますか?」その情報を開示してくれていたらおれは「じゃあやめますさよなら」と振り向きもせず表へ出ただろう。そしてその近辺にミュウツーが現れたとしても一切立ち寄らない。

この居酒屋チェーンのバイトを始めた当初は、もちろんイノウエとの関係性も出来上がってなかったため、つまらない金銭せびりをされても新鮮な気持ちで「まじっすか~たっけえすよ~」といったシンプルで他愛ない返答を出来ていた。
月日も経ち、同じ厨房ということもあって、友人未満の顔見知り以上の関係になり、次第に余裕もついた頃「まじっすか~来月払いますから勘弁してくださいよ~」の、一旦うやむやにしておく棚上げ返答や「時給の3分の1も取るんすか~キビシー!」といった自分なりのケレン味くわえたおちゃらけリアクションを繰り出せるようになっていた。「この仕打ち、新人は皆被らなければいけない通過儀礼なのだろう」と、甘んじて受け入れていたのだが、このゴミクソつまらねえ金銭せびりを週5で、それを9ヶ月も食らい続けていれば、三種類ほどの返答バリエーションだけでは心許ないし。イノウエは異常者なのだと判ってきた。

カツアゲみたいに実際に金銭を要求しているわけでないし、あくまでユーモアとして、コミニケーションとしてやっているのは判っている。やれやれと言いながらも結局は無償で要求に応じてくれるのも判ってるが。このイノウエ、便所の玉砂利にも劣る愚人は、おれと二人っきりの空間でも、例の金銭せびりを繰り出せるのだ。
周囲にホールの女子達が居る状況で金銭せびりをぶつけてきた時、勿論おれは納得し、それ以上に愚人イノウエに感謝の気持ちでいた。女子達の前で自己表現の場を与えてくれてあんがとなの気持ちで全力のリアクションをした。周りに女子達がいることを見計らって、急用でもないのに「テプラの場所どこですかね?」とイノウエに訊いて「はい300円」を捏造的に引き出し「のわ~勘弁してくださ~い」と大仰にリアクションを取ったりもした。イノウエよりもどちらかといえば女子達の方向に身を開き、今しがた流行ってる若手芸人のギャグとおれなりのオリジナリティを混ぜ込んだ究極のユニークリアクションを披露し割りとウケたりもしたのだ。コイツいい所あんじゃん、と思ってしまったおれも愚人だった。
たまたま休憩室でイノウエと二人っきりになった時のこと。手持ち無沙汰解消のため自分の鞄からスマホ取り出したのだが、電池残量が5%を切っていた。おれはそこでイノウエに
「ケータイの充電器貸し」「はい300円」

食い気味に答えてきたのを覚えてる。 「おい、大丈夫か」おれの顔を覗き込むイノウエを目の前にして初めて自分が気を失っていたことに気がついた。コイツのモチベーションはどこから来てんだ、なぜ、そこまでバカの一つ覚えを強行、乱用出来るのだとショックを受け、気を失っていたのだ。 二人しかいない空間で、女子達オーディエンスがいないこの状況でもそれをやってしまえるイノウエの根気強さに卒倒をしたのだ。

そもそもは、この、誰からも嫌われたくない不甲斐ない性分が祟って、こうも自分を苦しめてしまっていることは心得ている。ひとつ年上のホールのユカさんなんて、おれと同時期にこの居酒屋に採用されたにも関わらず、副店長の送別会で「そこのチャッカマン取って」と斜向かいにのイノウエに頼み、お馴染みの「はい300円」が飛んできても「はいはい了解了解」と軽くいなしていた。というよりあれはほぼ無視だった。ついでにおしぼりと呑水を皆の席に配れと顎で指示をしていた。「気に病む必要ないでしょモリタ君もあしらっていけば?」ユカさんはおれにそう助言を与えてくれたが、おれはおれだから出来ない、生まれ持ったこの性分は、内部は変えれない。だからおれは外部を変えるしか無い。だからおれはイノウエを殺す。ブチ殺すことにしたのだ。

イノウエを殺す使命を思い出したからには、奴が刻一刻と延命かましている実情がおれを苛む。
翌日にはトイザらスへ向かい、プレゼント梱包を施された救急車、消防車、パトカー、ブルドーザーのミニカーを携え、そのままバイト先へ向かった。店長よりも早く、いつも開け作業の30分前には来ているイノウエと店先でばったり会い「お、今日はやいな」と殺害されるとはつゆ知らずにイノウエはおれを称えた。
着替えのためそのまま二人で休憩室までの廊下を歩んでいると、後続するおれがトイザらスの袋をぶらさげているのに気付いたイノウエは、休憩室のドアノブをひねりながら振り向きざま「それどうした?」と空いていた左手で、まさか自分に贈答されるとは思ってもいないトイザらスの袋を指さした。
「イノウエさんへのプレゼントですよ、ささどうぞ」
それとなくイノウエを丸イスに促しながらトイザらスの袋を手渡した
「イノウエさん、中の箱、開けてもらっていいですか?」
「え、いいの?」
普通の返答をしたことに無性に腹が立ったが、さすがに自分へのプレゼントとわかって「はい300円」なんて舐め腐った戯言吐かないか。と気を取りなおした。気を取り直したことによって気づく。なぜそこは常識的なんだ?「はい300円」で貫いてみろよ。冷静に腹が立ったのを顔に出さぬよう言う。
「ええ、いいですよどうぞプレゼントなんで」
不審がりながらも笑みを零すまいとこわばるツラで、袋の口を広げて見おろし、リボンが貼り付いた小さな箱4つをひとつずつ取り出したイノウエは「ミニカー?なんで?」きわめてまっとうな疑問を投げかけてきた。
これが最後の「はい300円」になると期待を込めつつおれは要望を述べた。

「イノウエさんこのミニカー全部、吸い込んでもらっていいですか?」
「ん?」
「4台あるんですが、吸い込む順番は自分で決めてもらっていいので」
「まって、どういうこと?無理だよ」
「パトカーが一番平べったいから喉の準備にいいと思いますよ」
「何いってんの?」
「お前が何言ってんだよ」

気づけばおれは、店長のノートパソコンとコンセントの間に架かるACアダプタを掴みイノウエの頭をぶっ叩いていた。悶絶するイノウエを後ろ手にし、店内備品のタイラップで施錠した。拘束を解こうと駄々っ子みたいに何度も肩をくねくね揺らしている様が滑稽で、初めてイノウエに笑わされた。手首が赤く擦り剥ける一方でしかない不毛なあがきをやめさせるため、もう一発ACアダプタを顔面にぶつける。
「も」
じんわり発熱するACアダプタの一発にイノウエが、一文字だけ嘶いた。
「なぜだ!お前が得意な はい!300円!を言え!ダボが!それ一本で今までやってきたんだろ!おれは今日300円持ってきてんだ!それで吸い込みますって了承しろや!」
逃げ出そうと立ち上がったイノウエの首根っこを掴みそのままの流れで大外刈をかけ、フローリング柄のシートが貼られた床に伸してやった。それでも蠢き散らすダボの頬をわしづかみ、無理矢理に開けたその口に、まずは一台目と救急車を押し込んだ。
「おごご」
みっともない濁音と口角から王蟲の眼のような水泡を放ちながら舌で押し返し反発してくる。
「この期に及んで生きようとすんじゃねえ!玉砂利の分際が!この救急車はな、おれを救済するために喉の奥へ向かおうとしてんだ!サイレンが聴こえねえか!?通行の邪魔をするな!」
渾身の力をこめて救急車をねじ込んだ。見事イノウエの喉に納車された合図かのようにパトライトに弾かれたばかりの喉チンコが揺れていた。
「じゃあ二台目はブルドーザーで行くか、これで多分死ぬから残りのパトカーと消防車は、来月一歳になる甥っ子に渡せばいいか」
ブルドーザーの箱に手をかけようとしたその時、開けっ放しにしていたドアの向こうから誰かの足音が届いてきていた。急いで扉に鍵をかけ、足音に耳を澄ませる。この時間帯的に店長だろうの読みは当たり、3回扉をノックする音が消えると店長の声が聞こえてきた。
「あれ?イノウエさーんコレ鍵かかってます?」
虫の息だと思ってたイノウエが、店長の声に反応し、右半身を床にしたまま肘のあたりを中心にして、くるくると足掻き周り、丸椅子、靴箱、吸い殻入れなどを次々蹴飛ばしはじめた。おれは事の沈静化のため急いでイノウエの腹をけつりあげ、もう得意技となったACアダプタアタックを一発こめかみにお見舞いした。
「ヒュー、コー、ヒュー、コー、ヒュー、コー」
ひとしきり暴れまわったせいでイノウエから声にもなれない音だけが漏れていた。
「救急車の後ろの観音扉が何かのはずみで開いちまったみたいだなしぶとい奴め」
「ヒュー、コー、ヒュー、コー、ヒュー、コー」
「どうしました!滅茶苦茶物音が鳴ってるんですけど何が起きてます!?」
「ヒュー、コー、ヒュー、コー、ヒュー、コー」
「店長!」
「あれ?モリタくん?ちょっと開けてくれるかな」
「ヒュー、コー、ヒュー、コー、ヒュー、コー」
「店長!今、イノウエさんがモノマネしてるんですけど誰かわかりますか?」
「イノウエさんが?」
「はい!イノウエさんです!正解したら入れてあげますよ!」
「ヒュー、コー、ヒュー、コー、ヒュー、コー」
「わかった!簡単!ダースベイダー!でしょ?ダースベイダー!」
「ヒュー、コー、ヒュー、コー、ヒュー、コーヒュー、コー、ヒュー、コー、ヒュー、コー、ヒュー、コー、ヒュー、コー、ヒュー、コーヒュー、コー、ヒュー、コー、ヒュー、コーヒュー、コー、ヒュー、コー、ヒュー、コー、ヒュー、コー、ヒュー、コー、ヒュー、コー」
「ダースベイダーだ!そうでしょ絶対!」
「ヒュー、コー、ヒュー、コー、ヒュー、コーヒュー、コー、ヒュー、コー、ヒュー、コー」




「正解!」

イノウエのこめかみから額をつたい垂れている血が、傍に積み上げられていた臙脂色の座布団の一角を黒く染め上げていた。



[45] 「ひざ」という字が書けない

投稿者: 井沢 投稿日:2016年 7月29日(金)13時31分56秒 KD106181073228.au-net.ne.jp  返信





「ひざ」という字が思い出せない。
 

肘。これは「ひじ」だ。


月(つきへん)(にくづき)が付くことは覚えている。
右は券っぽかった気がするが、それは「勝」だ。





こういうのが付いてた気がする。いや、付いてた。



 

 



近い。近づいているぞ。

 

 
上に「傘」っぽいのもあったはず。




違う。これはゾエだ。

「ひざ」って別の読み方あったかしら。

 

音を頼りに字形を当てられる気がしてきた。


ひざひざひざひざひざひざひざひざひざひざ


10回言ってみたが、「ひざ」以外の読みが思い当たらない。


「東海道中○栗毛」

空欄を埋めよ方式にしても思い浮かばない。




違うな。




ああ、近くなったよ。でも何か違う。

 

だめだ。

見よう。もう見よう。

(携帯電話のメモ帳に「ひざ」と打ち、変換候補を見る)

 







 





座席で仰け反った。
「木」に「へ」に

これ。


 





覚えた記憶、ない。この漢字、覚えた記憶もない。


膝を打って上手く話を収めたかったのに、膝が打てない。

明日書ける気もしない。



[44] 夕焼け巡礼

投稿者: 橋の上のマリイ 投稿日:2016年 6月24日(金)18時34分58秒 s1611179.xgsspn.imtp.tachikawa.spmode.ne.jp  返信

五時のさいれんは哀し。
調子外れの夕焼け小焼けのおるごおるは哀し。

傘の付いた裸電球が肩を落としうなだれている。
木製の電柱の陰には
雨に濡れた少年の輪郭だけが残っている。

蹴られた小石。
道路に描かれた途切れ途切れの弥次郎兵衛。
長く斜めに落ちる影法師。

町外れの防火用水で白髪の若い女が焦げ付いた鍋を洗う。
「先日産まれた犬の仔が全部死んでしまったので煮て食ったのです。」
歯の無い口を歪めて軋む様に笑った。

橙色の空に烏の影絵。
山際が紺碧に滲む頃
お星さまひとつ、ふたつ。
あれは蠍の火。
生け垣の奥には小さな赤い祠と塞がれた井戸。


お手々つないで皆帰ろう。
手を差し延べる黒い山高帽の男の顔には
暗い穴がぽかんと開いているだけだった。

夕暮れの内緒話。
最後は誰も知らない。



[43] 三番街のフロラ

投稿者: 橋の上のマリィ 投稿日:2016年 6月24日(金)18時30分30秒 s1611179.xgsspn.imtp.tachikawa.spmode.ne.jp  返信

哀しい女が居た。
哀しい女だった。


毎朝六時に目を覚まし
真鍮の蛇口を捻り顔を洗う。
白いタイル貼りの洗面所は冷たく明るい。
身支度を整え街の洋品店で店番をする。
昼飯は家に帰る。
乾いたパンを一切れ、果物を少し摂る。
朝煎れておいた珈琲とシガレットを嗜み、また仕事に戻る。
夜は葉野菜の煮た物を食べ
届いた郵便物、その殆どが事務的な書類に過ぎない、に目を通す。
灯りの傍で赤い天鵞絨の表紙の聖書を読み
床に入る前には跪いて天に祈る。


そして、また
朝が来る。


私は真鍮の蛇口から水を掬い、顔を洗う。

フロラ。

誰も、この名を呼ぶ人は居ない。




[42] わるくないちこ

投稿者: 井沢 投稿日:2016年 5月31日(火)19時19分49秒 KD106181081014.au-net.ne.jp  返信

もう何ちこだって構わなかった。
いいちこでもいられなかった。

「おい、いいちこ。貸したるわ」
「なにこれ?」
「CD」
「それは見ればわかる」
行ってしまった。
自惚れでなければ、悪いちこも私を気に入ってくれていたように思う。

こないだのCD返さなきゃ。
「悪いちこ、これ」
「ああ、それ、どうやった?」
「んー、よかった」
「やるわ」
手紙入れといたのに。渡すこともなく持ち帰った。昨夜より退化して見えるまぬけな文字。捨てるのもなんかなと思いながら、畳んで、ゴミ箱の側面に滑り込ませるようにして、捨てた。ありがとうって書いただけで言ってない。箪笥の上にCD載せたら神棚みたいになった。

悪いちこが遅刻して登校するのが見えた。悠々としたものだ。あのカバン中身入ってないんじゃないのか。CDとプレーヤーしか入ってないんじゃないのか。机に並んで人がみっしり詰まった校舎は呼吸してるように見えるのかもしれないな。昇降口に向かわない。いきなり保健室行くんじゃないのか。

私がいいちこでなければ、もっとたくさん話せるのかな。そうじゃなくて、いいちこだから構ってくるのかな。
「これありがとう」
「おう」
「貸せるCDないけど」
「かき氷食う?」
「は?」

「買い食いしたことなくて」
「いいちこやな」
「いいちこといても面白くないでしょ」
「普通にしてるちこでいいわ」
「おまちどおさん、練乳サービスしといたでね~」
「おれ練乳食えん。おまえやるわ」

普通ってなんだろう。
なんか普通にかき氷食べれないとか、嫌だ。普通のちこに戻りたい。
氷たべすぎて寒い。寒くて顔赤い。悪いちこがかき氷食べないのが悪い。

「寒い。絶対唇ムラサキになってる」
「goodちこ」
「なんやそれ」
「残さんといてくれてありがとう、goodちこ」
「だからなんやそれ」

私の新しいなまえ。
ぐっちこぐっちこ、と口に出してみた。
わるくない。
学校に漫画持って行ったことないけど、明日悪いちこに貸すのにカバンに入れとこ。
ぐっちこぐっちこ。



[41] ライフをガード

投稿者: いなずま 投稿日:2016年 5月 5日(木)02時35分52秒 KD036012066066.au-net.ne.jp  返信

ふしだらな。またコラボしてんのか。こうも毎度毎度瘡蓋トカゲみたいなのとコラボしてもらっちゃさ、プレーンだった頃のあのパッケージをもう忘れそうだよ。モンハンってのが好きな輩なら喜んで買うんだろうがな、こちとらただただ、ただのふつうのドデカミンが飲みたいだけなんだよ。
アサヒ飲料は、ドデカミン好きはみんなモンハンが好きだと思ってんのか、ちがうよな。モンハンユーザーもドデカ民(ドデカミンを贔屓にしている市井の人々)に仕立てあげようといった魂胆だろうがな、それじゃあモンハンになんの興味が無いドデカ民をないがしろにしてしまうってことにならねえのかい?おれは警鐘を鳴らす意味でこんなドデカミン買わないよ。どうだ。
スクランブル交差点でも、斜めに渡ったほうが早く着くと知ってても、それはスクランブル交差点の思う壺だ、と遠回りになってもいいから真向かいに直進する人間だぞおれは。世間のたくらみに従順してやるつもりはない。

最近は昼休憩にきまって100円ローソンの飲料水コーナーの前で立ち止まり、悪態をつくのが日課になってきた。これはたぶんドデカミンを出荷しているアサヒ飲料がモンハンコラボをやめるその日まで続く。
ついでに、レジ脇の焼き芋って誰に需要があるんだ?と表へ出る頃には忘れているような疑問を一瞬頭によぎらせることも欠かさない。よぎらせるだけじゃ飽きたらず実際に口にしていることもあるかもしれない。それについての自覚はない。

ドデカミンの代わりといっては心許ないが、妥協のライフガードと大好きなうずまきデニッシュ、携帯ラジオに入れる単3電池、それらの入ったビニール袋と共に表へ出る。
レジ脇の焼き芋需要についてのことなど勿論忘れて、現場に戻る帰りしな、行きにも見かけた候補者のおじさんがまだ街頭演説を続けている。おじさんと言ってもおれと同い年ぐらいだ。
その候補者のおじさんはひっくり返した黄色のビールかごの上に乗って、リニア開発についてのなにかしらを拡声器を使わずのたまいている。

「大したもんだ、ビールかごをお立ち台に選んだことで庶民性をアピールできるもんな、地域に根ざしとりますよ、密着型ですよ、みたいにさ。ほんでそのビールかごの汚れ具合がしつこければしつこいほど、大声を張り上げる自分の健気さも演出できるもんな。ビールかごの中でも特に汚いやつを選んできたんだろな。スピーカーも使ってないみたいだし。そりゃ健気だ。そこまでへりくだりが過ぎれば、もはや白々しくなっちゃわないかねえ。青になったからもう行きますわ」

現場からほんの少し歩いた先の角を曲がると、あっというまにセブン-イレブンがあるのだが、先月から現場から一直線先にある100円ローソンに通っている。
距離的にいえばこちらのほうが信号を3つも越えないといけないのでセブン-イレブンよりもすこぶる遠い。
いつもこの往復だけで昼休憩が終わる。
いや、昼休憩を基本的にいつも10分程オーバーしてしまっている。
行きに3回、帰りに3回と、赤信号全てに捕まった時なんて30分も遅刻したことがあった。

おれは貧乏だ、とはいえ余所から無心してくるほどに凋落しているわけではないし、倹約家というわけでもない。本当はまた、かつてのように毎昼毎昼セブン-イレブンでブリトーと炭酸水、ブラックサンダーのイカした三点セットを買いたい。

そう。かつては、先月までは、現場から最寄りのセブン-イレブンに通っていたのだ。
あの角でトイプードルとその飼主の女に出くわすことがなければ、このおれの、この、もともと病める、
この自意識にいっそうの影がさすことはなかった。
そしていまはもう背後に遠ざかる候補者のおじさんを、あんな風に愚弄することもなかったし、おれが現場に遅刻して戻ってくる度に後ろからふくらはぎを蹴ってくる18歳年下の現場監督の北田さんを怒らせることもなかった。

先月のこと、おれは昼時の恒例、セブン-イレブンに向かっていた。店内に入る前からいい気分でだ。
今日もセブンイレブン前でブリトーを炭酸水で流し込んでやるぞ。そうだ、今日は片手を腰においてカッコ良く喰ってやる、と近々に叶うはずの未来を夢想しながら歩みを進めていた。
当のその角が近づいてきて、同じく当のトイプードルも現れた。
まずあれは、非常に可愛いトイプードルだったそう、非常に可愛いかったから・・・。

おれは歩みを緩め、角から現れたトイプードルだけに投げかけるといった態をなす「かわいいねえ」を、トイプードルの首輪から後ろに伸びるリードの先にいた飼い主の女にも聞こえるように言った。
その「かわいいねえ」が独り言に堕ちる危惧からおれはそうしたはずだ。
大袈裟な女優帽、大袈裟なでっけえグラサンをかけた飼い主の女は、腰から上をさっきに置き忘れてきたみたいに引き、完全に仰け反ってる姿勢。つまり、ドン引きをしていた。
飼い主の女のその態度に相反してこちらに興味を寄せ、おれの足元を嗅ぎに駆けてきたトイプードル。
若干たわんでいたはずのリードもピンと張り詰め直線となっていたのを克明に憶えている。

ねえ、なぜだ。飼い主の女よ、あんたが連れてるそのかわいいトイプードルが「かわいいねえ」と、すれ違う誰かしらからも称揚されないであろうと思ったまんまで表を出歩いてたのか?トイプードルの可愛さをみくびった故に起きた不測の事態にドンの引きをしたのか?
それとも、トイプードルが「どうも」と返事をするものだと本気で信じて「かわいいねえ」とトイプードルに直接挨拶をしたイカれたおじさんを目の当たりにしたと思ってドン引きをしたのか?
おい、おれはまだイカれたおじさんじゃないぞ。
まいったね伝わってなかったのかな、おれのあの「かわいいねえ」は、トイプードルからの応答は見込めないと知ったうえでの、「かわいいねえ」なんだよ、つまり間接的に女の飼い主のあんたに「かわいいですねえ」と同意を求めた「かわいいねえ」だったんだよバカが。あそこはあんたが気を使ってトイプードルに代わって「どうも」とおれに答えるところだろ。
ええ、もうなんとなくわかってるよ。おれが純粋に気持ち悪かっただけだったんだろ、故のドン引きしたっつうこったな、はい了解です。セブン-イレブンクソみてえな気分。

おれはその一件以来あそこのセブン-イレブンには行ってない、あの通りをあのペアが散歩コースにしてしまってる可能性があるからだ、万が一またバッタリ遭遇なんてことがあればこのPTSDが悪化して次回はいよいよイカれたおじさんとして本格デビューってことになり得るかもしれないからだ。
それにあの角には、まだおれの宛先不明の「かわいいねえ」が宙に浮いてる状態にある。

「おーい!おい!」
 「!」
「おーい!!!!」
「!!!」
「おい!!おっさん!また遅れてんだろ!作業始まってんだよ!なにブツブツ言いながらチンタラ歩いてんだ走ってこいよ!!」
「!はあ、はあっはあ、はあはあ、北田さん、はあ、すいません。」
「息切れアピールはいいから、おっさんおまえさあ、またむこうの100円ローソン行ってきたのか?バカなのか?いっつもすぐそこのセブン行けっつってんじゃんか」
「はあっはあ100円ローんソン、はあっ、が好きなんで、はあ」
「ローんソンってなんだ気持ちわりいな。んで何買ったんだ?お?パンと、これは、ハハハハ!!!ウケるな、ライフガード!おっさん!」

ライフガードのなにがそれほどツボだったのか、北田さんは一人ウケながらおれのふくらはぎを、遅刻した20分になぞらえて20回蹴った。「喰う時間なんかもうねーからはやくパンとライフガードしまって作業にもどれ」

制裁を受け終えたそのふらついた両足で、作業現場そばの植え込みに置いていたリュックに膝をついて近づき、リュックのサイドについているメッシュのドリンクホルダーにライフガードを差し込んだ。
それを眺めていた北田さんは、ドリンクホルダーに入った状態のライフガードもなんだかツボらしく、おれとライフガードを交互に指差しながらずっと笑っていた。
なんだかここは自分も笑わないといけない気がして笑ってみたら、遅刻した分際が笑うなと、まだ地面に膝をついてる状態のおれをむこうに押しこむように蹴ってきた。
近くに掴まれるものがなかったので咄嗟に自分のリュックにしがみついて、共に倒れこんだ。
空いてたリュックの口から、黒飴やラジオ、三色ボールペンが飛び出て散らばった。



[40] 瞬景

投稿者: ボーフラ 投稿日:2016年 4月23日(土)19時38分3秒 p180.net059084001.tnc.ne.jp  返信

深く深く水の中に落ちていく。呼気が気泡となって海面を目指し、私は海底に向かう。

海底には潜水艦があった。覗き窓を叩いてみると、亡妻が居た。おい、お前なのか。私の言葉は気泡になって消えてゆき、呼吸が苦しくなる。

「××さん、また巡回しますから、何かありましたら其処のブザーを」

潜水艦の中の亡妻は本当のそれではない、もっと深く海溝を潜らなければならないだろう。私は大きなフラフープを目印に海溝の淵を目指す。

もっと深いところで、亡妻は、シングルベッドに横たわっていた。おい、しっかりしろ。生まれ変わるんだろう?しっかり、しっかり。私は夢の中に居る事を自覚した。これは私の深層心理の風景というわけだ。それならばミラクル。

王手、飛車取り。

七冠王が最後の一冠を奪われた瞬間に見た、白昼夢でありました。彼は、そのまま、あじさいの露と消えました。

あじさいの花が、咲いていた。

----露と落ち露と消えにし我が身かな 難波の事も夢のまた夢



[39] あだちだ。あだちが来た。

投稿者: 義ん母 投稿日:2016年 4月 4日(月)11時36分22秒 KD119104028023.au-net.ne.jp  返信

「自分を信用していない人が、誰かに信用されるはずないじゃない!」
いつもの如く高田馬場の10度カフェにて作業に打ち込んでいたが
どうにも頭ん中で『タッチ』の南ちゃんが、やたらと俺に説教してくる。
新体操で全国に行ったかどうか知らないが、少なくとも俺は年上である。
少しは敬語を使って欲しいものだ。
いや、それ以上に、初対面だ。初対面の年上の首ねっこ捕まえて、
いきなり「後に転機となった言葉」っぽいものを投げかけてくるとは業腹極まりない。
然し返答に窮している内に南ちゃんは眼に涙を浮かべて
「知らない!たっちゃんの馬鹿!」と言って早々に立ち去ってしまった。
誤解だ、南ちゃん。俺はたっちゃんじゃない。一体、南ちゃんはどうしたというのか。
俺とたっちゃんと見間違えるなんて実は光を喪っていたあの監督じゃないか。
いくらあだち充がキャラクターの描き分けが出来ないからといって、南ちゃんとあのグラサンの描き分けすらできなくなってしまったというのか。痛い。何だ、急に。あだちだ。あだちが来た。ふいに脳にあだち充が現れた。それでいて例の巨大な筆先で俺の眼球を内側からつついてきやがる。すごく嫌な顔している。何が言いたい。どうやら「そんくらい描き分け出来るっちゃ」と言いたいらしい。何故、ラムちゃん口調だったのかは知らない。だとすれば答えは一つ。俺はたっちゃんだったのだ。これで辻褄が合う。
さて、辻褄が合ったところで困ったところだ。
確かに俺は今、自分自身を信用していない。何しろ昨日、床に就く直前に
「僕は世界中の誰より5時に起きて昼の会議に向け資料製作をします」
かくも明日の自分に確約して、眠りに就いたは良いが、床から起き上がれば既に午前11時。目覚ましを止めた記憶がない。そして、ここにきて南ちゃんの登場。これはつまるところ、目覚ましを止めたのは紛れもなく俺であって、それ以外は今まで全て上杉達也だったということだ。思えば昨日の「僕は~」はどう考えても「明日早く起きたい上杉達也」ではないか。いつの間に入れ替わってしまったというのか。
どの窓口に問い合わせれば良いのだ。
そんなことより、時間が無い。何しろ俺が俺であろうと上杉達也だろうと、締切は待ってくれない。そして間もなく会議である。
痛い。あだち。やめろ。突くな。違う。あだちではなかった。
ただの胃痛だ。上杉達也になりきって何とか現実より逃げ切らんとしていたのに、もう目の前には現実しかなくなってしまった。南ちゃん、助けてくれ。最悪、音読みしてナンちゃんで良いから助けてくれ。駄目だ。ナンチャンは今、ヒルナンデスのスタンバイだ。タッチ、タッチ、誰か代わっての意味での、タッチ。



[38] そういうトコロ

投稿者: 流し目髑髏 投稿日:2016年 4月 2日(土)23時33分58秒 softbank126124252061.bbtec.net  返信

 煙草を買いに外へ出ると、忙しないサラリーマンと国内外の観光客が大阪のオフィス街を混ざり合わないリズムで往来している。最寄りのコンビニで煙草を買い、信号待ちをしていると片言の不安げな日本語が私を呼び止めた。
「ココ、ワカリマスカ?」
褐色だが日本人っぽい顔立ちをした中年の男が手汗でヨレヨレになった紙を僕に見せてきた。この界隈を大まかに描いた地図だ。赤い点と見慣れない外国語が書き込まれている。
困っている人を無下に出来ない性分の私は「ちょっと分からないけど、一緒に探そう」と返答した。
 イサオさんは日系ブラジル人だ。なるほど日本人ぽい訳だ。妻子を残して関西の工場で三年間働き、晴れて帰るのだ。妻子の写真を私に見せたイサオさんはクシャクシャの笑顔をしていた。探している建物にはブラジルへ帰る航空機のチケットを手配した旅行社が入っているのだという。
 イサオさんの精一杯の日本語を咀嚼し日本へ来た経緯を聞きながら目的地を探すが、地図が雑で中々目的地が見つからない。目的地一階に入っている飲食店の名前と大通りの名前、そして最寄り駅、祖先がお宝を埋めた在処を記した様な地図に何度も迷って立ち止っているとイサオさんが不安そうな目で「ダイジョウブデスカ」と訴えてくる。曖昧な笑みで答えて、地図と携帯の地図を見比べる。ズームイン、アウト、イン、アウト、イン。何となくわかった気がする。入り組んだ路地を一つ入り、右、右、左。少し進むと地図にあった飲食店のケバケバしい看板が目に入った。僕はビルを指差しながらありったけの英語で伝えた。
「イサオさん、オッケーオーライ。ユー、シーク、トラベラー、イン、ディス、ビルディング」
イサオさんは返事の代わりに苦笑いを返してきた。
 雑居ビルに入り、目的の旅行社の入っている七階のオフィスまでのエレベーターに乗り込むとイサオさんが興奮を抑えきれずに爪を噛んでいる。
「アトスコシ、アトスコシ、カエルヨ」
後の言葉は日本語ではなかったので聞き取れなかった。母国を離れて、慣れない異国で暮らす。それは私が想像するより遥かに難解で困難な事なのだろう。道案内の十数分しか接していないのに私はイサオさんに親近感と尊敬を抱いた。
 エレベーターの扉が開き、旅行社のネームプレートが貼られたドアをノックすると、海外旅行のパンフレットと外国語が飛び交う私には非日常が開かれた。イサオさんは安堵と興奮が入り交じった表情で部屋の手前に腰かけていたスーツ姿の男の名を呼び部屋へと入る。良かった。私は部屋に入る事なくイサオさんに手を振った。
「ゴッド、ブレス、ユー」
扉を閉めようとした時、イサオさんは振り返った。
「ナンデ、イングリッシュ、バッカリ!ガイコクジン、ミンナ、イングリッシュ、シャベレル、ト、オモウナヨ!ニホンノ、ソウイウトコロ、ホントウニ、ウンザリ、ダヨ!ソレカラ!」
無意識に扉を急いで閉めてしまった。そういうトコロ、か。そういうトコロ、ね。嗚呼、そういうトコロなんだ。まだ七階にいたエレベーターに逃げる様に乗った。



[37] 肩を落とす

投稿者: 偶数の指達 投稿日:2016年 4月 2日(土)01時51分45秒 KD113153111243.ppp-bb.dion.ne.jp  返信

 がっくりと肩を落とした友人に連れられて、僕は河川敷を三往復もした。

「肩、ないなぁ」
「どこに落としたんやろ」

 甲子園は明日に迫っている。
 四番でエースの友人が落とした肩を探し出さなくては、創部以来の悲願である初戦突破は絶望的だ。

「おっ! あったで!」

 まだ青いススキに腰まで埋もれた友人が声を上げた。

「ほんまか!」

 僕は駆け足で声の方へ向かった。しかし肩は見当たらない。
 代わりに友人の足元には『がっくり』が転がっていた。

「っておい、見つけたんはがっくりの方かい」

 僕は友人の肩に突っ込みを入れようとして、空振りした。
 友人は草むらに落ちたがっくりを器用に口で拾い上げると、僕に持たせているエナメルバッグに押し込んだ。
 しかし『がっくり』と『肩』を落とした友人は本当に馬鹿だ。がっくりはまだしも、この大事な時期に肩を落として紛失するなんて不注意すぎる。
 僕は溜息をついて、まだ周囲を注意深く見回している友人に言った。

「肩は誰かが拾ったんちゃう? 警察行って見ようや」
「無駄や。肩なんて一日に何百個も届けられてるやろうし、誰の肩か分からへんわ」

 悔しさに震える友人。

「……なあ、元気だしいや」

 慰めようと友人の肩に置こうとした僕の手は、また空を切った。
 僕は行き場を失い宙を彷徨っていた手で袖をまくり、自分の肩に視線を移す。
 日に焼けた肩には、九つの丸い跡が薄く浮かんでいた。

「肩に名前、書いてなかったん?」
「名前書く奴なんかおるらんやろ」

 その時、僕は閃いた。
 自分の肩に残る判子注射の跡を友人に見せながら、閃いた名案を披露する。

「なあ、判子注射ってあるやん?」
「それがどうしてん」
「あれが自分の名前の判子やったら、肩を落としてもすぐに見つかるのにな」
「ほんまそれ。医療現場の怠慢や」
「シャチハタでもええから、なんとかならんかったんかな」
「シャチハタはあかんやろ。ちゃんとしたハンコやないと」
「え、なんで?」
「そら、大事な身体やさかい。シャチハタやとインクが薄なったりするやろ」
「ほな、家紋とかどない? なんか格好ええやん」
「でも自分の家紋、知らんしなぁ」
「……家紋。嘉門達夫やったら知ってるんやけどなぁ」
「しょうもな」

 途方に暮れた僕達は空を見上げ、明日の試合が大雨で延期になることを願った。
 それから河川敷をもう一往復して、警察で紛失届けを出してから寮に帰った。
 事態を知った監督は天にも昇りそうなほど肩を怒らせて僕達を叱咤した。

 ――翌日。
 快晴の甲子園のマウンドに、友人は肩を落としたまま立っていた。
 結果はもちろんボロ負け。
 球界注目の大エースも、肩が無くては形無しだった。(これが言いたかった)



 P.S.
 嘉門達夫さんのニューシングル「だるまのオッサンの歌~ソースの二度漬けは禁止やで~」好評発売中です。

 

http://www.sakurasaku-office.co.jp/kamon/pc/index.html



[36] あけみとアケミの物語

投稿者: 伊勢崎おかめ 投稿日:2016年 4月 1日(金)11時37分46秒 124-110-175-179.osaka.fdn.vectant.ne.jp  返信

今夜は雨降りだからかお客さんが来ないねぇ、アケミちゃん。ちょいと灰皿取ってくれるかい?
ああ、悪いねぇ。しばらくお客さんも来なさそうだし、アタシの昔話でもしようか。


アタシんち、父ちゃんが酒乱でろくに働きもしないから、母ちゃんが夜の仕事と内職で
アタシら姉妹を食べさてくれてたんだけどさ、それでもやっぱり貧しくて、
妹らを学校に行かせるためにアタシが新聞配達のバイトしてたの。
だからろくに勉強もしないで、ほんとはダメなんだろうけど16の頃からこの世界に入ったってワケ。


働き始めてすぐのころだったか、好きなオトコができたんだけど、奥さんがいてさ…
働き者で優しい人だったんだけどね、アタシが妊娠したら「堕ろしてくれ。別れよう」って。
あんなに「妻とは別れる」って言ってたのにさ、あんなに優しかったのにさ。
オトコなんて信用できない、その時はホントそう思ったもんさ。


その二年後に結婚したオトコが酒乱で、ろくに仕事もしないでさ、
それでもやっぱ惚れたオトコだからってアタシが食べさせてたの。
ホント父ちゃんとそっくりだよ。オンナは父親に似たオトコを好きになるってよく言ったもんだよ。


ボロアパートでそいつと子供4人と暮らしてたんだ。テーブルも買えなくて、
拾ってきたりんごの木箱を食卓代わりにしてたっけね。ある日、仕事から帰ったら
木箱に手紙が置いてあってさ「好きな人ができた」って。そいつ、荷物まとめて
出て行きやがったのさ。アタシのなけなしのタンス預金も全部持っていきやがった。


もうそりゃ女手一つで4人の子供育ててきたから辛いこともいっぱいあったよ。
今じゃ「シングルマザー」だっけ?そんなカッコイイ呼び方があるけど、
昔は「母子家庭」なんつって白い目で見られて。
あぁゴメン、泣いてるんじゃないよ、バカだねぇ。


アタシもバカでさ、その次にまた別のオトコに惚れちまったの。
もう結婚はコリゴリだなって思ってたから、一緒には暮らしてたけど籍は入れず。
事実婚ってやつだね。でもアタシのことをほんとの奥さんみたいに扱ってくれたさ。
「いつか籍入れような」ってずっと言ってくれてた。


知人の披露宴にも一緒に出席してさ、「これ、うちのカミさんです」なんつって紹介されて、
アタシもちょっとその気になっちゃってさ、「いつかこの人と結婚できたら…」心の中で
そう夢見てる自分がいた。だけどさ、そいつもある日突然いなくなってさ。
そしたらウンと年下の女と結婚したって共通の知人から聞かされてさ。
思い切ってメールしたら、「そういうことだから、ゴメンね」って返信が来てさ。
アタシは何だったの?アタシのこと奥さんとして扱ってくれてたじゃない?
ホントこのときばっかりは死にたいと思ったよ。けど、子供たちの寝顔見てたら
「こんなことで負けてらんない」
って思って、今まで走ってきたワケ。


まぁ…いろんなオトコに出会ったけど、アタシの見る目がないのが一番ダメなんだよね。
もうアタシ泣かないからね。アケミちゃん、ハンカチありがと。アタシがだめになったら
アンタにこの店譲ろうと思ってるからさ、そん時はよろしく頼むよ。


(カランコロン)「あら、純ちゃん、いらっしゃい!アンタが今日初めてのお客さんだよ。
さあ入った入った!アケミちゃん、純ちゃん濡れネズミだからさ、タオル持ってきてやって。
純ちゃん、いつものやつでいいかしら?」


・・・アケミはこの時、まだ知らなかった。ママの本名が「あけみ」であることを。



~あけみとアケミの物語~(完)



[35] ラブレター

投稿者: 正夢の3人目 投稿日:2016年 2月24日(水)04時08分26秒 p2192129-ipngn17401marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

哀しいったらないから、ラブレターを書いたんだ

マイスリーって睡眠導入剤があってね、一見笑顔っぽい印象があるわけ
たぶんスマイリーと誤読するから?
マイスリー、スマイリー、マイスリー、スマイリー
ほら、ね?
まぁなんだっていいんだけど、それ飲んで笑顔を作って天井を見るの
アイドルが作り笑顔の練習するみたいに、顔の筋肉ガチガチにさせて
天井越えて夜に飛んで私の作り笑顔が爆発して降り注げばいいんだって
そこまでしてストンと落とすと、顔の筋肉が抜けると同時にふわっと眠れる・・・時があるわけ
でもその日は違ったんだな
ストンと落としたと同時に涙がボロボロ出てきてね
なんかの蓋があいたんだ。絶対
そしたら何すればいいかわかんなくなって
気付けば机に座ってたのさー

途中でやめた日記の後ろをひっちゃぶって
好きです好きです好きなんですって
誰にあてたわけでもなくて
でもぺしゃりと鼻が潰れた横顔が好きとか
好きな音楽を聞くと少し難しい顔をするのが好きとか
顔をくしゃっとさせて笑ってそこから真顔に戻る時が好きとか
書いて、書いて、書いて、
誰にあてたわけでもないんだけれど
ボールペンの汁で真っ黒になった紙一枚
それを丁寧に四つ折りにして
封筒に入れて
キスした後に封を閉じて
机の引き出しに放り込んで
寝た

ラブレターで射精したんだ
言ってみればさ

んっふっふっ

引き出しの中にまだあるんだ
ドロックソの私の「純愛」
捨てらんないよ 捨てらんないんだぁよ



[34] お友達からお願いします

投稿者: 井上だいすけ 投稿日:2016年 2月23日(火)11時05分24秒 p155040-ipngn200802kobeminato.hyogo.ocn.ne.jp  返信

42歳になりました。バカボンのパパが年下になってしまいました。
世代を表す言葉として、松坂世代だのハンカチ世代だのがありますが、
私たちの世代はイチロー世代と言われるんでしょうか。

イチロー選手といえば、もはや説明不要の天才バッターですが、
私は昔から、イチローの言動やシーズンオフに帰国して
はしゃいでいる姿を見ると、胸がザワザワします。

それは、よく選手の今シーズンの一打席が年棒から割って
何円でしたみたいなデータが出ますが
私の年収がイチローが打席に入ったときにチンコの位置を
直したしぐさぐらいの計算になることも
無関係ではないでしょう。

ですが、嫌いな人も実際に会うと「すごくいい人だったよ」
となることもよくある話です。
私がイチローとパーティなどで会うことがあったら、
尾崎の盗んだバイクを、頭の中でえげつない仕様に改造する話や、
赤ペン先生と生徒の間に恋愛関係は成立するのか、
といった話題で、盛り上がったりするかもしれません。

ですが、友達になっても普通に「イチロー」や「イチ」などと
呼んでいたら、イチローのその他大勢の友達と一緒の
存在になってしまうでしょう。

そこで、私はイチローに「チローってよんでもいい?」
と尋ねてみることにします。
これでもしOKをもらえたなら、どんだけイチローが
心とチンコの大きな人間かってことになりますよね。
ってことで、まずはお友達から頼むわ、チロー。



[33] 歯も磨けよ

投稿者: TOKUNAGA 投稿日:2016年 2月22日(月)22時17分33秒 122-223-51-89.fukuoka.fdn.vectant.ne.jp  返信

    頭の悪い6畳一間。
    知らん女が来とって、ダウンジャケットの袖の汚れを
    グダグダ言いよるもんで、持っている時間を保ち得ない。
    壁の隅にもたれて「もっともだ」と。




  針落とした瞬間バツバツバツバツ


  持参した数枚のレコードをテープに移して貰いながら
    自尊と自虐の間を揺らめいている。立体的事物。

    「髪切らんとな」

    ポカリスエットがヌルいという証拠。

    知らん女は、主体的意志のゼリー状で、いかようにも変形する。
    テープの頭出しをしていると、オブジェとなり挨拶をして消えた。

    録音が終わり3本のテープとレコードを袋に入れ表に出る。
    純然たる音楽趣味。




    飯を食って風呂に入って寝た。



[32] 「もういいかい」

投稿者: 紀野珍 投稿日:2016年 2月22日(月)01時22分51秒 135.73.232.153.ap.dti.ne.jp  返信   編集済

「もういいよ」
 ――え?
 その声は、耳のすぐ近くで聞こえた。同時に、ぬるい吐息が首筋をなでたような気がして、ユウタは身体を強ばらせる。壁にもたれ、右腕に目を押し当てた体勢のまま、金縛りに遭ったみたいに動けなくなった。心臓は痛いくらい高鳴っている。
 ――いまの、なに。
 深く息をつき、ユウタは考える。
 かくれんぼで、「子」が、「鬼」の耳許で、「もういいよ」と囁いた。「鬼」の「もういいかい」に応えて。
 まるでコントのような状況だが、ユウタに笑う余裕はこれっぽっちもなかった。だって、変だ。おかしい。そんな突拍子もない悪戯をしてよろこぶ友だちなんていない。
 そこでふと、疑問が浮かぶ。
 ――誰の声だった?
 ハヤト。違う。ヒトシ。違う。トモユキでもリョウタでもない。じゃあユリちゃん? ミホちゃん? 女の子の声には聞こえなかったが、すでに記憶は曖昧で確信が持てない。あとは……あれ、ほかに誰がいたっけ。
 頭がじんじんしてきた。唇を舐め、唾を飲み込む。
 ――空耳だったのかも。
 いま起こったことは気のせいに違いない。ほとんど祈るような気持ちでそう決めつけると、身体がすっと軽くなる。うん。ぜったいにそうだ。ビビる必要なんてない。気のせいだし。思い切って顔を上げて、振り向いてしまえ。きっと誰もいない。ほら、人の気配がどこにも――。
「もういいよ」
 声がした。また耳許で。頭から血の気が引き、膝が震えだす。空耳じゃなかった。本当に誰かがすぐ横にいる。
 ほとんど間をおかず、声が語りかけてくる。
「もういいよ」
 その声は、たしかに聞き覚えがあり、しかし知っている誰の声とも一致しない。
「もういいよ!」
 出し抜けの大声に、ユウタは身をすくませる。怒気をはらんだ声がしばらく耳の奥に残る。
「もういいよ」
 ――あれ?
 声が耳許から離れたような気がした。
「もういいよ」
 間違いない。声が遠い。いまは一メートルくらい後ろから呼びかけられたようだ。
「もーういーいよーお」
 さらに声が遠ざかる。いいぞ、そのままどこかへ行ってくれとユウタは願う。
 ……。
 …………。
 ………………。
 ……………………。
 …………………………。
 つぎの声が届かない。本当に立ち去ってしまったのだろうか。ユウタはふたたび緊張がほぐれるのを感じる。
 ――動かなきゃ。
 耳鳴りがするほどの静寂に、ユウタは焦れた。行動を起こさないかぎり、ずっとこのままだ。
 強く押し付けていた顔を、腕からゆっくりと引きはがす。まぶしい。壁に寄りかかったまま、おそるおそる瞼を開ける。まばたきをくり返し、目が慣れるのを待つ。もう一方の手を壁に当て、身体を起こす。壁と、そこに突いた両手がはっきり見える。深呼吸して腹に力を入れ、回れ右で反転する。
 誰もいない――と思った瞬間、背後から抱きつかれた。視線を落とすと、青白く細い、二本の腕。
 そして、耳打ち。
「もういいよ」



[31] アンサー:カスタマーセンターの話

投稿者: TL125 投稿日:2016年 2月14日(日)21時48分41秒 p494050-omed01.osaka.ocn.ne.jp  返信

2時間のクレーム対応を終わらせ、ふーっとためいきをついて、ペットボトルのお茶を飲む。
しゃべりつかれた。口が渇ききっている。

その瞬間ヘッドセットからは「ぴ」という短いんだけど、絶望的な電子音が耳へ突き刺さる。
お茶はまだ口の中だ。ごくり、と慌てて一口で飲んだもんだから、気管に入ったようだ。
こんな時、人間のカラダは条件反射で異物を出そうとする本能があることを、ワタシは知っている。
もう電話はつながっている。つまり、咳き込みの音が聞かれてはならない。

「もしもーし。もしもーし。…ちぇっ。やっとつながったのに」

聞こえてます。アナタの声は聞こえてますけど、今、話せないからミュートにしているだけなんです。
そんなことも言えないからミュートにしてるんだけど、…あっ切らないで!

げっほ!げほげほげほ!げっほ!

「ぴ」から、コンマ数秒でミュートを押して、さらに外して、ピカピカの声でしゃべる。
「お電話(ミュートぽち:げっほげほ)ありがとうございます(ミュートぽち:げほげほげほ。うー、げっほ)」
…ふー、今の、不自然だったかな?



[30] カスタマーセンターの話

投稿者: 大伴 投稿日:2016年 1月27日(水)16時11分7秒 58x4x58x30.ap58.ftth.ucom.ne.jp  返信   編集済

製品の不具合などでカスタマーセンターに電話すると、優雅な音楽とともに機械の女性が「いま混んでるから、このまま待つか、もしくはかけ直してほしい」と伝えてくることがあります。

ここでひたすら待つか、あきらめて後ほどかけ直すか、この選択は困難を極めます。
「このまま何時間も待たされるのでは?」そんな不安とともに電話を握りつづけるのはとても強い精神と忍耐が必要とされます。
しかしだからといって後ほどかけ直したところで、相手がすぐに出るという保証は全くないのです。

で。
僕は「ひたすら待つ派」なのですが、待つのは本当に苦しいものです。
「待たされた人は基本的にイライラしているから、ある程度の時間が経過してしまった場合はもうその電話には出るな」というマニュアルが向こう側に存在したらどうしよう。もしそうだとしたらこのまま待ちつづけても電話は永久につながらないのではないか?
そんな邪推すら浮かんでくじけそうになり、「待ってもムダだ、もう切っちまえよ」という悪魔と「あきらめないで、やまない雨はないわ」という天使が衝突。エーデルワイスが何十回もループ再生されるなか、膨張する不安とひとすじの希望に賭ける己との戦い。

なんとも厳しいものですね。



(終)



[29] 介護文藝

投稿者: TL125 投稿日:2016年 1月20日(水)00時58分19秒 p1550240-omed01.osaka.ocn.ne.jp  返信

覚醒レベルが低くなると、「見えないものが見える」時間。
「そこにいた娘はどこに行ったの?」と娘に聞く。
「いいコだから、一緒に布団に入ろう」と誰もいない空間に手招きする。
恐怖はないらしい。

そして、一晩寝るとそんなことを言った記憶はない、覚えてない、と言う。
ムキになって言うわけではなく、他人事のように「ホントに?ワタシが?」と
まるで、何かが憑依した様子にも見える。

夜中にはっきりした寝言を言うこともある。
誰かを呼んだり、叫んだり。

「見えないものが見える」時間と言うのは、夢の中と近いのだろうか。
いつもと同じ風景に誰かがいる(見える)状態は、淋しさを軽減できるのだろうか。

でも、見えるだけの映像は映像でしかなく、残念ながら、何かあっても助けてくれるわけではない。
ヘルパーさんでもなければ、近所の人でもないのだ。

やっかい、という視点ではなく、自分にはできない経験として、興味深く観察してしまう。
しかし、それと並行して、本人の尊厳を守るための振る舞いについてあれこれ模索する。
憐れむことなく、ただ、一人の人間として存在していること。
それは否定できるものではなく、むしろ、肯定すべきものであること。
つまり、「当たり前」のことを「当たり前」にすることのむずかしさ。

計算し尽くされた「何気なさ」が要求されるのかもしれない。



[28] ペイメント

投稿者: たくま 投稿日:2016年 1月18日(月)10時41分15秒 KD124210083115.ppp-bb.dion.ne.jp  返信

13日前

「あ、もしもし。
あの、テレビのCMを見て電話させてもらったんですけど。
ええ、その、借金の過払い金っていう件についてなんですが。
はい、7年か8年前に全部で150万くらい借りてました。
えっと、たしか光南信販っていうところで借りたはずです。
ええ、そうです。
時間ですか、自分、夜勤なんで昼間はだいたい空いてるんですが。
次の金曜ですか、はい、大丈夫だと思いますけど…。
13時ですか、大丈夫です。
そちらの法律事務所に直接うかがえばいいんですね。
わかりました。
はい、よろしくお願いします…」


8日前

「あ、どうも、はじめまして。
よろしくお願いします。
えっと、当時の書類とかは全然残ってないんですけど。
大丈夫なんですか。
これに記入していけばいいんですね。
え、はい…。
あ、そうなんですか。
もう一度来ないといけないんですね。
明後日ですか…。
ああ、いいですよ。
わかりました、それではまた…」


6日前

「どうも。
こちらの人は…。
え、警察の方なんですか。
光南信販の、吉島支店の事件…ですか。
なんとなく覚えてますよ、うちの近くだったですし。
光南信販、吉島支店…猟銃とかナイフとか持った男が立てこもって、
従業員や通行人が何人か亡くなったんですよね。
そんな派手な事件なのに犯人は逮捕されてなかったんですね。
まだ逃亡中なんですか。
いくつか聞きたいこと…
ええ、いいですけど…」


今日

「今回はほんとに驚きましたよ。
まさか僕ひとりを逮捕するためにここ何年か、借金の過払い金返還を
やたらと宣伝してたなんて。
え、被害者のうちのひとりが、あの人のお子さんだったんですか。
なるほどそうですか、そういう事情が…。
もう逃げも隠れもできませんね。
でも、こんなことまでやってしまうなんて。
この国もまだまだ捨てたもんじゃないですねえ。

…え、僕の過払い金って、いちおう返ってくるんですか。
56万8750円もですか、すごい。
この国もまだまだ捨てたもんじゃないですねえ」



[27] 「キレイの秘密」

投稿者: にんじゃ 投稿日:2016年 1月15日(金)20時21分32秒 KD111107164153.au-net.ne.jp  返信   編集済

ママさんモデル 井戸端ハニーさんに「キレイの秘密」を聞いてみた。

--ずばりスタイル維持の秘訣は?

モデルという職業柄、「どうやってスタイルを維持しているの?」と聞かれることがよくあります。そんなときにいつもお答えしているのが、ママチャリ(笑)。ママチャリの立ち漕ぎって下半身の引き締めに一番いいと思うんです。といっても娘の送り迎えだけなんですけどね(笑)。幼稚園が自宅から70Kmくらいあるので、立ち漕ぎでも片道6時間はかかります。いつも朝3時には家を出ますね。

--娘さんのお弁当、いつもInstagramで拝見しています。

なるべく手料理を食べさせるようにしています。夏場はお弁当が傷みやすいので、ファミチキに大根おろしをかけたり、色々と工夫してますよ(笑)。毎朝2時には起きてお弁当を作ってるかな(笑)。あ、でも睡眠はお肌のために8時間はとりたいので、夜6時には寝てますよ(笑)。

--夜6時ってかなり早く寝られるんですね。

そうなんです。だから、娘のお迎えはヘリなんです(笑)。旦那が5年目の結婚記念日にヘリをプレゼントしてくれて(笑)。「僕からはヘリだよ~(笑)。」って。

--素敵な旦那さまで羨ましいです。あと、美しいお肌の秘訣は?

さっき8時間は睡眠をとる事って言いましたよね(怒)。

--失礼しました(怒)。心がけている食事法なんてありますか?

特別なことはやってないですよ(笑)。食べたい時に食べたいものをストレスなく楽しんで食べる事ですかね(笑)。私、うどんが大好きで、ほぼ毎日食べちゃいますよ(笑)。ふるさとの味というか……私、香川県出身なんで(笑)。

--では最後に、仕事と家庭の両立って大変じゃないですか?

仕事や育児の疲れを、次の日に持ち越さない!という事が大事ですね。GHBってご存知ですか?アフリカ産で、小さじ擦り切れ一杯を水やジュースに溶かして飲めば爆睡できるんです(笑)。3時間で目が覚めちゃうんですけど、10時間分の睡眠がとれるんですよ!また今度、まとめて購入しようと思ってるんですけど、一緒にオーダーします?(笑)。

--結構です(笑)。本日は素敵なエピソードを交えた「キレイの秘密」ありがとうございました。


井戸端ハニー (Honey Idobata)プロフィール:
職業 モデル。1976年 栃木県出身。 母は日本人、父はアルゼンチン国籍を持つナイジェリア人とアルジェリア人のハーフ。井戸端三姉妹の長女。19歳でモデルデビュー。「non-non」「GanGam」「NO MORE」など多数のファッション誌で活躍。その後、32歳で結婚し、翌年に長女を出産。出産後も、次女のソー、三女のスイートと共にママさんバンド「ハニー ソー スイート」を結成。現在も女性ファッション誌「MDMA」でカリスマ的人気を誇り、モデル業や音楽業のほか、オリジナルブランドのプロデュースやトークショーなど幅広い活動を展開している。



[26] 弔辞的ロックレビュー

投稿者: TOKUNAGA 投稿日:2015年12月16日(水)17時53分26秒 122-223-48-178.fukuoka.fdn.vectant.ne.jp  返信

ほんで寝とったら、フーーーーンときてさ*携帯着信かと思いよったら、ロックンロールやけん。でもさ、耳の穴ん中結構広いやん?なんかさ、体育館3つ分はあるけんさ、そいでフィードバックしまくりよるもんやけんさあ、さすがにねエレキの音にはかなわんもんでさ、歯くいしばって針金もって反省しよったら、、、でもさあ、今度ばかりはロックンロールにはかなわんと思ったよね。硬いけんさあ。そいで急に柔くなったりフーーーーーンとかいいよるしさ、アルミホイルのごとピカピカしとるし、そいで色も変わるやん?なんかさミドリ虫とかおるし、コンクリートとかも関係しとるんやろ?

だけんさ、やっぱロックはエレキのギターでね、だいたいエレキのギターはさ、地球とか誕生する遥か以前の宇宙の誕生のときにさあ、ロックばする人数分、神さんが用意しとった、、とかいう話もメタル神話っぽくてアリやん?だってそうやないと いくらなんでもヌルヌルして生臭い脳味噌からさぁ、出来んよ?エレキみたいな、あんな硬いもん。

だからさあ隕石みたいなもんでね。んで隕石割ってさ、そんとき出た火花がチカチカしよるし、音がさあ、やっぱ隕石やけ、どでかいやん?だって恐竜絶滅したわけやし。そんなもんさ、どえらい音にきまっとうやん。

昔やけんさ、恐竜の時代は、今と違って。

そんなもんをね、なんやレコードやらCDやら手のひらサイズにしてさ、いつでも再生できるようにしちゃう、、なんてのがさ、そもそも暴力的な話ではあるけどね、でもロックンロールってどこか危険な匂いしよるやん?だけんねぇ、やっぱその名残だと思うとるよ。

まあでも我々も宇宙の生命体の一部やけんさぁ、、だからみんなロックで暴れたりしよるし、ロックンロールやりよる人たちは髪長い人おおいやん?あれもそれと同じでさ、やっぱエネルギーの活性化ともとれるやん?毛が金色とかピンク色になっとる人もおるし、立っとる場合とかもあるし。

クラシック音楽とかさあ...楽器が木で出来とるやん?ニス塗っとるし、で、中世とか、みんなハゲとるやろ?でもさ、なんとか宇宙に近づこうとして、みんな揃って黒い服ば着とるけどさぁ、やっぱ、、、フーーーーーーーン、、、、、と、、こうさぁ、鼓膜の振動はおこらんもんね。 針金一本で辛抱できると思うよ。

転がる隕石ってことでさ、今回はさ、ロックンロールを語りつくしたかったんやけどさ、宇宙は広いやん?んで、まだまだ耳の穴はさ、広いといえどたかだか体育館3つ分やからさあ、その辺のとこでさ、少しでも宇宙と交信したいけん(未体験)押しピン持ってウロウロしとる奴もおる訳やしさ。トランシーバ -とかエレキのギターのアンプに似とるやろ?



[25] (無題)

投稿者: 正夢の3人目 投稿日:2015年12月14日(月)01時33分42秒 p3064-ipngn5602marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信

うわ、長い。アップしてみたらこの長さとは・・・すみません。



[24] 特別対談

投稿者: 正夢の3人目 投稿日:2015年12月14日(月)01時25分19秒 p3064-ipngn5602marunouchi.tokyo.ocn.ne.jp  返信   編集済

特別対談
織田信長×ニート

信長「どうも。今日はよろしくお願いします。」
ニート「よろしくお願いします。いや~、緊張しますね(笑)」
信長「そうですか?」
ニート「だって有名人ですから。色々と噂も聞きますし。」
信長「どうせ悪い噂でしょ?(笑)」
ニート「いやいや。でもまぁ、怒らせると怖いとか。」
信長「ああ、斬り捨てるみたいな。そんなイメージあるみたいですね。」
ニート「そうそう。だからちょっと怖いな~と。正直、緊張してます。」
信長「そんなに斬り捨ててないんですけどね(笑)実際会ってみてどうですか?」
ニート「いや、穏やかな方だなぁと。暴君っぽさは全然感じない。」
信長「そういうのもっと言ってください(笑)」
ニート「逆に僕はどうです? 会ってみて。」
信長「そうですね。結構よく喋るんだなって。意外な感じで。」
ニート「引きこもりとかとごっちゃにされる事も多いですから。ニート=引きこもりではない。」
信長「ああ、なるほど。」
ニート「ただ働いてないだけっていう。明るいニートもいますよ?」
信長「そうですよね。どうしてもイメージが先行しちゃう。僕もそうだし。」
ニート「わかります。」
信長「親に食わせてもらってるんですか?」
ニート「まぁ、そうですね。」
信長「へぇ。」
ニート「迷惑かけてるなーと思ってますが。でも信長さんも親に迷惑かけた口でしょ?」
信長「ですね。今思うと若かったなって感じですが。」
ニート「位牌に抹香ぶちまけたり(笑)」
信長「それ、勘弁してください(笑)」
ニート「まぁ、でもその後立派になられたわけで。僕はまだ親に迷惑かけ続けてますから。」
信長「その精神性はすごいですよね。ちょっとマネできない。」
ニート「僕なりの天下布武ですかね(笑)」
信長「ええと、ちょっと意味がわからないけど…」
ニート「いやいや(笑)あ、そうだ。これ、どうなのかな? 本能寺の話って聞いてもいいのかな?」
信長「いいですよ。何でも。」
ニート「あれ、どうでした? 熱い?」
信長「まぁ、熱いですよ。」
ニート「へー、やっぱり。」
信長「燃えてますからね。後、急でしたから。「マジかー」って感じで。」
ニート「予感とかはなかったんですか?」
信長「んー、どうだろ。言われて「ああ! 明智!」っていうのはありましたけど。」
ニート「なるほど。」
信長「でも、是非に及ばず、ですね。それは。」
ニート「その台詞って本当に言ったんですか?」
信長「言いましたよ。言ったよね?」
森蘭丸「――まぁ、そんなニュアンスの事は。」
信長「だよね。」
ニート「へー、すぐにそういう言葉がパッと出るのはすごいな。」
信長「そちらも「働いたら負け」とか色々あるじゃないですか?」
ニート「あれは僕が言った訳じゃないし。でも、みんなが思ってた事ですよね。それを偶然形にしたのがあの人だったっていう。」
信長「なるほど。」
ニート「簡潔にね、伝わりやすかったっていう。」
信長「なんで働かないんですか?」
ニート「んー、面倒くさい?」
信長「いや、聞かれても(笑)」
ニート「正直、なんで働かないんだって聞かれても、困るんですよね。みんな聞きたがりますけど。僕にとっては当たり前の事だから、すごく言葉にしづらい。逆に「なんでそっちは働いてるの?」っていう。働くのが当然だから働くとか、そういうのはつまらないなーって。普段からなんとなくそんな事は思ってて。既成概念に縛られ過ぎてるっていうんですかね? 信長さんもそういう常識や既成概念を切り崩してきた人じゃないですか。そういう部分にすごいシンパシーを感じてて。」
信長「んー、どうだろ。」
ニート「ま、僕なりの天下布武ってやつですよ(笑)」
信長「ええと、ちょっと意味がわからないんだけど…」
ニート「いやいや(笑)あ、もう時間ですかね?」
信長「うわー、早いな。」
ニート「もっと一向宗の話とか聞きたかったんですけど。」
信長「あれは、いいです(苦笑)しんどかっただけだし。あ、そうだ。最後に1つだけ。これだけは聞きたいなって思ってた事があって。」
ニート「ええと、僕はいいけど、時間は? あ、大丈夫? じゃ、どうぞどうぞ。」
信長「えっとですね、何歳くらいまで働かないつもりなんですか?」
ニート「ああ、それね。んー、ちゃんと決めてるわけじゃないけど……50歳くらいまでは頑張りたいな、と。」
信長「ああ、人間50年ですしね。」
ニート「出た(笑)」
信長「出たって(笑)」
ニート「最後にお決まりのも聞けたんで、この辺で。」
信長「はい、どうも。ありがとうございました。」



[23] ラブホテル考

投稿者: TL125 投稿日:2015年12月13日(日)10時57分56秒 p652107-omed01.tokyo.ocn.ne.jp  返信

ラブホテルを選ぶときは、スイーツを選ぶように目をキラキラさせるのがいい。
あんまり古すぎず、でも、淫靡な電飾がさりげなく灯っているところがいい。
ブティックホテルなどと言い出したのは誰だか知らないが、一周回って、あまりにも品がない。

スーパーのチラシのように「タイムサービス!!」などと大きく書かれた看板は、スーパーのチラシを見るような眼で見ればいい。
選んだうえで入ったのであれば、負けではない。

フロントは、カーテンが閉まっていて、妙齢のご婦人から鍵だけが差しだされるのも、味わいがある。
部屋の写真パネルについたボタンを押して、ふっとパネルの電気が消えるのを見るのも、うふふ、と声が出る。
逆に、タッチパネルで順番待ちを選んで、「あと30分後です」なんて書かれたレシートを持って、小さなソファに座るのも、ばかばかしくてよい。

部屋の設備。スロット北斗の拳。マイナスイオンドライヤー。サウナ。ジャグジー。
はっきり言って、いらない。でも、いらないものが置いてあるのが、非日常でいい。

必要なものは、有線チャンネル。これだけは、欠かせない。
パチンコ屋のBGM。蛍の光が流れる中、それでも人々が喧騒の中にいる音。
こんなアリバイが通用するならば、「足がつって終電に乗り遅れた」と言っても、みんなが信じてくれる。

一人で寝るには大きすぎるベッド。
鍵がついていないトイレで用を足すのは少しドキドキする。
バスタブから湯を溢れさせて、海辺にいるような錯覚に陥る。

外では持ち歩けないライターでタバコに火をつける。
サービスのミネラルウォーターをここぞとばかりに飲む。
普段、お茶しか飲まないくせに。

非常口の位置を確かめる。
備え付けの電子レンジで、のり弁を温める。
圧迫感しかないTVはデジアナ変換だ。

満腹になったら、少し寝ようか。
それとも、TVゲームを借りて、夜通し遊ぼうか。

お金を払って、特別な空間を買う。非日常を買う。
目的は、ワタシだけが知っていればいい。

相手がいるときは、ずっとベッドで肌を合わせていたっていい。
大きな声を出したって、いい。
もちろん、我慢していてもいい。許してもらえるのなら。


レンタル掲示板
お知らせ · よくある質問(FAQ) · お問合せ窓口

© GMO Media, Inc.